川井論文に対するEditorial Comment-内臓心房錯位症候群とDORV
川井らの論文は外科的治療を受けないまま66歳まで自然歴を経過しているファロー四徴症型の両大血管右室起始(DORV)の症例報告である. チアノーゼ性心疾患でありながら, 比較的良好な自然経過をたどっている理由は, 適度な肺動脈狭窄のために低酸素血症も肺高血圧も致死的な状況とならなかったことが主な要因と考えられる. 日本人のファロー四徴症の自然歴の平均は7歳半ぐらいと報告されていることを考えると, まれな例である1)2). この報告に関連して, 二つの点を成人の循環器学を専門とする医師に知ってほしい. 一つは内臓心房錯位症候群(Heterotaxy syndrome)に伴う心奇形について, もう一...
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Published in | 心臓 Vol. 37; no. 4; pp. 328 - 329 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本心臓財団
15.04.2005
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ISSN | 0586-4488 |
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Summary: | 川井らの論文は外科的治療を受けないまま66歳まで自然歴を経過しているファロー四徴症型の両大血管右室起始(DORV)の症例報告である. チアノーゼ性心疾患でありながら, 比較的良好な自然経過をたどっている理由は, 適度な肺動脈狭窄のために低酸素血症も肺高血圧も致死的な状況とならなかったことが主な要因と考えられる. 日本人のファロー四徴症の自然歴の平均は7歳半ぐらいと報告されていることを考えると, まれな例である1)2). この報告に関連して, 二つの点を成人の循環器学を専門とする医師に知ってほしい. 一つは内臓心房錯位症候群(Heterotaxy syndrome)に伴う心奇形について, もう一つはDORVの定義とそれに伴う論議についてである. 1. 内臓心房錯位症候群と心奇形 心臓を含め, 哺乳類の体は左右非対称である. 通常, 肺は右が3葉, 左が2葉に分かれており, 胃と脾臓は腹部の左, 肝, 胆嚢, 虫垂などは右に位置している. 心臓の右心房は左心房の右にあり, これを内臓心房正位(situs solitus)と呼んでいる. |
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ISSN: | 0586-4488 |