血漿交換により救命された劇症肝炎の2症例
目的)劇症肝炎は, 治療が困難で死亡率の高い疾患である. 当院において過去4年間で, 劇症肝炎による血漿交換施行例は4症例である. そのうちの2症例が救命しえたので報告する. 症例1)22歳の女性で, 昭和60年10月8日に発熱と全身倦怠感のため, 当院外来受診. トランスアミナーゼ値の著明な上昇・PTの延長のため即日入院した. 三相波を含むデルタ波が出現し, 肝性昏睡度がIII~IV度となったため入院4日目より血漿交換(PE)を計3回施行. PE後, 昏睡度I度まで改善され, 劇症肝炎に伴う急性腎不全も改善した. 入院後37日目に退院した. 症例2)35歳の医師(男性)で, 昭和61年8月1...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 33; no. 4; p. 479 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.07.1987
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ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | 目的)劇症肝炎は, 治療が困難で死亡率の高い疾患である. 当院において過去4年間で, 劇症肝炎による血漿交換施行例は4症例である. そのうちの2症例が救命しえたので報告する. 症例1)22歳の女性で, 昭和60年10月8日に発熱と全身倦怠感のため, 当院外来受診. トランスアミナーゼ値の著明な上昇・PTの延長のため即日入院した. 三相波を含むデルタ波が出現し, 肝性昏睡度がIII~IV度となったため入院4日目より血漿交換(PE)を計3回施行. PE後, 昏睡度I度まで改善され, 劇症肝炎に伴う急性腎不全も改善した. 入院後37日目に退院した. 症例2)35歳の医師(男性)で, 昭和61年8月10日, 発熱・倦怠感・意識障害のため緊急入院. ビリルビン・NH_3 ・トランスアミナーゼ値の上昇とトロンボテスト10%以下および肝性昏睡度II~III度のため入院当日からPEを3日間計4回施行した. PE後, 昏睡度はI度以下となり, 脳波もα波が認められるようになった. 途中トランスアミナーゼとビリルビンの上昇により非A非Bウイルス感染かと思われたが, その後低下し入院後52日目に退院した. 考察)劇症肝炎の約90%はウイルス性と考えられているが, 今回の2症例もHBV感染によるものであり, 血漿交換により救命できた症例である. 救命理由として(1)早期診断と血漿交換治療, (2)他臓器の疾患がなかったこと, (3)重篤な合併症(出血・感染・脳浮腫など)が現れなかったこと(4), 年齢的なこと(死亡例は45歳以上であった)などがあげられます. 今後さらに症例を重ね細部にわたり検討をしていきたいと考えます. |
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ISSN: | 0546-1448 |