心房頻拍を伴い,心筋生検にてpostmyocarditisの所見を認めた産褥性心筋症の1例 -β遮断薬療法の有用性

症例は26歳, 女性. 第1子妊娠20週頃より頻脈を自覚. 妊娠30週で切迫早産のため, 塩酸リトドリンの投与が開始される. 徐々に心不全症状が悪化し, 当科初診時には心拍数200/分の心房頻拍を呈していた. 心筋逸脱酵素の上昇はなく, CRPは陰性. 心エコー図上, 左室の高度のび漫性壁運動低下を認め, 産褥性心筋症が強く疑われた. 塩酸リトドリンを中止し, 利尿薬, ジギタリスを投与. 妊娠35週, 帝王切開にて出産. その後も心房瀕拍および左室壁運動低下は持続した. コクサッキーB5のウイルス抗体価が異常高値を示し, 心筋生検にてpostmyocarditisの所見を認めた. 電気生理学...

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Published in心臓 Vol. 32; no. 6; pp. 491 - 496
Main Authors 会沢佳昭, 松橋浩伸, 名取俊介, 佐藤伸之, 石井良直, 川村祐一郎, 長谷部直幸, 菊池健次郎, 加藤淳一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 丸善 15.06.2000
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Summary:症例は26歳, 女性. 第1子妊娠20週頃より頻脈を自覚. 妊娠30週で切迫早産のため, 塩酸リトドリンの投与が開始される. 徐々に心不全症状が悪化し, 当科初診時には心拍数200/分の心房頻拍を呈していた. 心筋逸脱酵素の上昇はなく, CRPは陰性. 心エコー図上, 左室の高度のび漫性壁運動低下を認め, 産褥性心筋症が強く疑われた. 塩酸リトドリンを中止し, 利尿薬, ジギタリスを投与. 妊娠35週, 帝王切開にて出産. その後も心房瀕拍および左室壁運動低下は持続した. コクサッキーB5のウイルス抗体価が異常高値を示し, 心筋生検にてpostmyocarditisの所見を認めた. 電気生理学的検査により, 心房頻拍は自動能亢進によるものと診断した. 心房頻拍のrate controlと拡張型心筋症様病態に対しβ遮断薬療法を選択し, メトプロロールを少量から開始, 漸増した. ADLおよび左室壁運動は徐々に改善した. 発症1年4ヵ月後, 心房頻拍は停止した. その後メトプロロールを漸減し, 発症2年10ヵ月で中止したが, 以後心不全の悪化や心房頻拍の再発は認めていない. 難治性心房頻拍を伴い, postmyocarditisの所見を認める産褥性心筋症に対して, β遮断薬療法が有効であった.
ISSN:0586-4488