成人した肢体不自由者の療育を考える
障害児・者療育指導は, 既に20年余りを経過し, 一応の効果はみられているが, 成人に達した障害者で, 問題になるのは対人関係が育ち難い点にある. 特に知的障害を併せ持つと, 社会のルールや制約が理解し難く, 生活範囲が制限され, 孤立化している. 「対象」早期療育に参加し, 長期間フォローできた9家族を対象に, 成人後の問題点を検討した. 内訳は男性5例, 女性4例である. 「結果」母親との離別, 死別を機会に, 施設入所となり, 男性1例は弟が引き取ったが, 生活介助困難で, 施設入所待ちの状況にある. 在学中は職員や介助者とも慣れ, 生活援助の受け入れもみられたが, 親の高齢化で援助にも...
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Published in | リハビリテーション医学 Vol. 34; no. 12; p. 888 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本リハビリテーション医学会
18.12.1997
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ISSN | 0034-351X |
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Summary: | 障害児・者療育指導は, 既に20年余りを経過し, 一応の効果はみられているが, 成人に達した障害者で, 問題になるのは対人関係が育ち難い点にある. 特に知的障害を併せ持つと, 社会のルールや制約が理解し難く, 生活範囲が制限され, 孤立化している. 「対象」早期療育に参加し, 長期間フォローできた9家族を対象に, 成人後の問題点を検討した. 内訳は男性5例, 女性4例である. 「結果」母親との離別, 死別を機会に, 施設入所となり, 男性1例は弟が引き取ったが, 生活介助困難で, 施設入所待ちの状況にある. 在学中は職員や介助者とも慣れ, 生活援助の受け入れもみられたが, 親の高齢化で援助にも制約があり, 20歳代の半ばを過ぎた頃から友人や経験の不足もあり, 自己主張が通り難かったり, 思うように行動ができないなどで, 全身の筋肉痛や筋緊張の亢進を生じ, 拒食, 呼吸困難なども生じ, 介助者の参加に制限をきたすこともある. ボランティアとの交流も表面的で, 生活ルールも定着せず, 人間生活で必要な対人関係や思いやりの学習も不足している. 「考按」人間生活で求められる協調性や対人関係づくりは, 幼児期からの学習を通して育成されるが, 障害のため理解や判断がつき難く, 自己コントロール学習に問題がみられる. 「まとめ」運動障害に知能障害を合併していると, 生活面における可能性や限界についての判断, 理解が難しい. 幼児期から人間育成を中心とした療育指導がより重要である. |
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ISSN: | 0034-351X |