スギ花粉症の免疫遺伝学的研究HLA抗原について

[目的]スギ花粉によるアレルギー疾患が現在社会的問題となっている. 埼玉県では, 西部地域にスギ花粉が多く飛散しているという報告がなされている. その地域に存在する寄居市周辺における発症率は必ずしも高くないのに対して, スギ花粉飛散量の比較的少ない所沢市周辺の方がむしろその発症率が高いことが報告されている. 所沢市周辺は, 窒素酸化物等の大気汚染物質が寄居市周辺に較べて多いことが指摘されており, 大気汚染がその原因の一つといわれている. またスギ花粉症の発症における宿主の要因として, HLA抗原を介する遺伝的関与の存在が指摘されている. 今回我々, スギ花粉飛散量の比較的少ない所沢市周辺に在住...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 37; no. 2; p. 321
Main Authors 小林賢, 阿藤みや子, 鈴木洋司, 関口進
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.03.1991
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ISSN0546-1448

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Summary:[目的]スギ花粉によるアレルギー疾患が現在社会的問題となっている. 埼玉県では, 西部地域にスギ花粉が多く飛散しているという報告がなされている. その地域に存在する寄居市周辺における発症率は必ずしも高くないのに対して, スギ花粉飛散量の比較的少ない所沢市周辺の方がむしろその発症率が高いことが報告されている. 所沢市周辺は, 窒素酸化物等の大気汚染物質が寄居市周辺に較べて多いことが指摘されており, 大気汚染がその原因の一つといわれている. またスギ花粉症の発症における宿主の要因として, HLA抗原を介する遺伝的関与の存在が指摘されている. 今回我々, スギ花粉飛散量の比較的少ない所沢市周辺に在住或いは勤務している花粉症患者を対象として, HLA抗原を調査し, 興味ある結果を得たので報告する. [方法]スギ花粉症の診断は, 花粉飛散期に臨床症状を有し, IgE RASTスコアが基準値以上とした. スギ花粉症患者29名, 健常人66名を対象として, NIH標準法に準じ, HLAタンピングを行なった. [結果]HLA-A24抗原(86%)がクラスI抗原として健常群(52%, p=0.001)に比して有意に増加していた. HLA-DRw53抗原(83%)がクラスII抗原として健常群(58%, p=0.01)に比して有意に増加していた. しかしながら既に報告されているHLA-A26やDQw3抗原等については有意差が認められなかった. HLA-A11およびAw33抗原は症例数が少ない為に, 有意差が見られなかったが, 健常群に比して減少傾向がみられた. またAw33抗原はB44と強い連鎖不平衡状態にあることが知られているが, B44は健常群に比して差がみられず, Aw33抗原のみが減少していた. 以上のことから所沢市周辺のスギ花粉症患者において, DRw53ないしはA24抗原がスギ花粉に対して感受性を示しているものと推測される. また, A11ないしはAw33抗原がスギ花粉に対して抵抗性を示していることが推測される.
ISSN:0546-1448