低心拍出状態を伴わないうっ血性の急性心不全の治療におけるヒト心房性ナトリウム利尿ペプチドの腎保護作用について

ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチドであるカルペリチドやフロセミドによる利尿作用は, うっ血があって低心拍出状態ではない(warm and wet type)急性心不全の治療において非常に重要であるが, 治療経過中に一過性に腎機能が悪化することがある. そこでwarmandwettypeの急性心不全治療におけるカルペリチドとフロセミドでの腎機能への影響に違いがあるかを検討した. 当院へ入院した, warmandwettypeの急性心不全患者のなかで, カルペリチド持続静注もしくはフロセミド1回静注のみで6時間以内に心不全症状が改善した患者128名で後ろ向きに検討し, カルペリチド群72名とフロセミ...

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Published in心臓 Vol. 39; no. 3; pp. 274 - 278
Main Authors 岸拓弥, 山田明, 岡松秀一, 砂川賢二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本心臓財団 15.03.2007
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Summary:ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチドであるカルペリチドやフロセミドによる利尿作用は, うっ血があって低心拍出状態ではない(warm and wet type)急性心不全の治療において非常に重要であるが, 治療経過中に一過性に腎機能が悪化することがある. そこでwarmandwettypeの急性心不全治療におけるカルペリチドとフロセミドでの腎機能への影響に違いがあるかを検討した. 当院へ入院した, warmandwettypeの急性心不全患者のなかで, カルペリチド持続静注もしくはフロセミド1回静注のみで6時間以内に心不全症状が改善した患者128名で後ろ向きに検討し, カルペリチド群72名とフロセミド群56名で比較した. 両群間で心不全の基礎疾患, 重症度, 内服内容, 治療経過, 腎機能に有意差は認められなかった. 治療後3~4日目での血清クレアチニン濃度は両群とも上昇した. 治療から7~10日後では, フロセミド群では血清クレアチニン濃度の改善は認められなかった(+20%→+19%)が, カルペリチド群では血清クレアチニン濃度の有意な改善が認められた(+18%→+11%, P<0.01). 多変量解析では, カルペリチド群における血清クレアチニン濃度の改善において入院時の血清クレアチニン濃度<2mg/dLとC反応性蛋白<2mg/dLが独立寄与因子であった. このことから, カルペリチドはwarm and wet typeの急性心不全治療において, 腎保護作用を有する可能性が示唆された.
ISSN:0586-4488