リンフォグロブリン投与時に見られた輸血副作用
リンフォグロブリン(抗ヒト胸腺細胞ウマ免疫グロブリン以下ATG)製剤は重症再生不良性貧血の治療時に1クール限りの投与が可能である. 本剤はヒトのTリンパ球マーカーと特異的に反応するため, 理論的には白血球が混入する血液製剤の輸血は抗原・抗体反応による副作用を伴う可能性がある. 今回我々は重症再生不良性貧血の患者へのATG投与が関係したと思われる輸血副作用例について報告する. 【臨床経過】 患者は37歳の重症再生不良性貧血の患者で, 治療のために Cy およびATGを5日間投与. 投与終了8日後のPC輸血時に皮膚掻痒感・膨疹, 強度のアレルギー症状がみられ輸血を中止. 翌日から数日間のPC輸血時...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 44; no. 2; p. 254 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.04.1998
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ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | リンフォグロブリン(抗ヒト胸腺細胞ウマ免疫グロブリン以下ATG)製剤は重症再生不良性貧血の治療時に1クール限りの投与が可能である. 本剤はヒトのTリンパ球マーカーと特異的に反応するため, 理論的には白血球が混入する血液製剤の輸血は抗原・抗体反応による副作用を伴う可能性がある. 今回我々は重症再生不良性貧血の患者へのATG投与が関係したと思われる輸血副作用例について報告する. 【臨床経過】 患者は37歳の重症再生不良性貧血の患者で, 治療のために Cy およびATGを5日間投与. 投与終了8日後のPC輸血時に皮膚掻痒感・膨疹, 強度のアレルギー症状がみられ輸血を中止. 翌日から数日間のPC輸血時にも同様な症状がみられたが, ソル・コーテフおよび強ミノ投与で改善された. 以後アレルギー症状は前記薬剤の予防的投与により出現しなかった. 血清中のHLA抗体を調べたところ, 特異性不明の抗体が検出され, LCT法がAHG-LCT法よりも強く反応する現象が見られた. ただし患者血清中のウマタンパクは免疫拡散法では検出されなかった. なお, 患者はPC, RBC輸血時にはP社の白血球除去フィルターを使用していた. また6ヶ月後の調査では血清中の抗体は消失し, 輸血時のアレルギー症状はみられなくなった. 【考察】 本例はATG投与後に, PC輸血後アレルギー症状が出現したので, ATGと輸血副作用と関連が推定された. 重症再生不良性貧血の治療にATGを投与するケースは多く, また本疾患は輸血が不可欠なことから, 輸血時には前記副作用の起こる可能性を念頭におくべきであろう. さらに臓器移植時に免疫抑制に用いる抗リンパ球グロブリン製剤投与時にも同様の副作用監視が必要であろう. |
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ISSN: | 0546-1448 |