股関節症の病期からみた歩行分析

変形性股関節症におけるX線学的病期の進展に伴う歩容異常について株討した. 「対象」片側股関節症31例, 全例女性で, X線学的病期分類は, 前期11例, 初期6例, 進行期10例, 末期14例, 対照群として25例の健常女性を用いた. 「方法」身体前面で腕組みし, 裸足にて床反力計上を6回歩行させ正規化した. 測定は, アニマ社製の歩行解析装置(サンプリング周波数50Hz)を用いた. 「結果」股関節伸展角, 歩行速度, 抜重効果は, 前期より対照群に比し有意に減少し進行期, 末期になると差は著明になった. 歩幅, 一歩行周期における単脚支持期率, 駆動力において, 股関節症の初期から有意な減少...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 35; no. 12; p. 1058
Main Authors 大森弘則, 井村慎一, 馬場久敏, 佐々木伸一, 嶋田誠一郎, 武村啓住, 奥村康弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.12.1998
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Summary:変形性股関節症におけるX線学的病期の進展に伴う歩容異常について株討した. 「対象」片側股関節症31例, 全例女性で, X線学的病期分類は, 前期11例, 初期6例, 進行期10例, 末期14例, 対照群として25例の健常女性を用いた. 「方法」身体前面で腕組みし, 裸足にて床反力計上を6回歩行させ正規化した. 測定は, アニマ社製の歩行解析装置(サンプリング周波数50Hz)を用いた. 「結果」股関節伸展角, 歩行速度, 抜重効果は, 前期より対照群に比し有意に減少し進行期, 末期になると差は著明になった. 歩幅, 一歩行周期における単脚支持期率, 駆動力において, 股関節症の初期から有意な減少を認めた. 制動力は進行期から減少し, 歩行時の股関節屈曲角は, 末期になってはじめて, 健常群より有意に減少した. 「考察」X線上, 形態の異常しかない前期股関節症例でも, 歩行中の股関節伸展角度が有意に減少したことは, (1)臼蓋形成不全による前方の被覆度が小さい, (2)大腿骨の過度の前捻のため, 大転子の外方化を図るべく内旋位歩行によって腸腰筋が伸張されることが原因と推察される. 距離・時間因子, 運動力学的因子の異常は, 股関節への負荷の軽減と考える. 末期の屈曲角度の減少は, 関節裂隙の消失に伴うものと考えられる. 「結語」股関節症の病期の進展に伴い, 歩容異常も段階的に各パラメータが障害されていた.
ISSN:0034-351X