ベトナムにおけるレトロウイルス感染の現状

【目的】近年, 米国, カリブ海諸国, ヨーロッパ各国で, HTLV-IIおよびHTLV-Iが, 薬物静注濫用のHIV感染者に複合感染していることが報告され, その疫学調査が始められている. 今回, 我々は, ベトナムにおけるHTLV-I/II感染とHIV-1感染の現状を解析した. 【材料と方法】ベトナムの成人, 子供, 妊婦, 売春婦, 薬物静注濫用者, 血友病患者, 透析患者血清1899検体(北ベトナム:945, 南ベトナム:954)を用いた. 血中特異抗体スクリーニングは, 市販のPA法を用い, 陽性検体は, ウエスタンブロット(W.B.)法で確認した. また, データーの検定には, x...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 40; no. 2; p. 298
Main Authors 福島誉子, 北村勝彦, 仲宗根正, 吉崎ひとみ, 渡邊くほみ, 岡本ゆかり, 杉浦亙, 中田進, 目黒崇, 山田兼雄, 森次保雄, 山崎修道, 本多三男, 小室勝利
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.05.1994
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ISSN0546-1448

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Summary:【目的】近年, 米国, カリブ海諸国, ヨーロッパ各国で, HTLV-IIおよびHTLV-Iが, 薬物静注濫用のHIV感染者に複合感染していることが報告され, その疫学調査が始められている. 今回, 我々は, ベトナムにおけるHTLV-I/II感染とHIV-1感染の現状を解析した. 【材料と方法】ベトナムの成人, 子供, 妊婦, 売春婦, 薬物静注濫用者, 血友病患者, 透析患者血清1899検体(北ベトナム:945, 南ベトナム:954)を用いた. 血中特異抗体スクリーニングは, 市販のPA法を用い, 陽性検体は, ウエスタンブロット(W.B.)法で確認した. また, データーの検定には, x^2 検定を用いた. 【成績と結論】抗HTLV-I/II抗体および抗HIV-1抗体陽性者は, 北ベトナムの検体からは検出されず, 南ベトナムの検体に片寄り, 抗HTLV-II抗体陽性率は13.1%(125/954), 抗HTLV-I抗体陽性率は0.2%(2/954), 抗HIV-1抗体陽性率は1.6%(15/954)と高率を示した. 抗HTLV-II抗体陽性者125名の内訳は, 成人:1(0.5%), 子供:2(1%), 売春婦:1(0.5%), 薬物静注濫用者:119(59.5%), 透析患者:2(6.7%)であり, 薬物静注濫用者の抗HTLV-II抗体陽性率は, 他の抗体陽性率に比べて有意に高値(P<0.05)を示した. また, 抗HTLV-I抗体陽性者2名と抗HIV-1抗体陽性者15名もすべて薬物静注濫用者であった. そこで, 薬物静注濫用者200名の抗HTLV-II抗体陽性率と抗HIV-1抗体陽性率, および抗HTLV-I抗体陽性率を比較すると, 抗HTLV-II抗体陽性率が有意に高値(P<0.05)を示した. また, これら抗体の複合感染を検討したところ, 抗HTLV-I抗体陽性者2名は抗HTLV-II抗体との複合感染者で, 抗HTLV-I抗体単独感染者は検出されなかった. 抗HTLV-II抗体と抗HIV-1抗体の関係では, 抗HIV-1抗体陽性者15名中10名が抗HTLV-II抗体との複合感染者であった. 一方, 薬物静注濫用者200名(平均年齢:20.79±15.78, 17歳-64歳)を年齢別に解析してみると, 全体の87%が30-40歳代に集中して存在した. 同様に, 抗HTLV-II抗体陽性者119名(平均年齢:22.03±16.88, 22歳-64歳)も解析したが, 90.8%の抗体陽性者が, 30-40歳代に集中していた. これら南ベトナムの薬物静注濫用者に認められるHTLV-II感染の特性を明かにすると共に, 何故, 南ベトナムに高率に認められるのか検索中である.
ISSN:0546-1448