観念運動失行を呈した症例に対する定時排尿の試み

「目的」脳血管障害における排尿障害は, リハビリテーションの予後に大きく関与する因子であり, 排尿障害の治療は神経障害発症と同時に始めなければならない. 今回, 観念運動失行を呈する症例においての排尿障害およびその訓練についての検討を行った. 「対象」脳血管障害により観念運動失行を伴った9症例(男性4名, 女性5名:平均年齢64.4歳)で, 全症例が尿便失禁状態で, 常時おむつを着用していた. 「方法」症例に対し, 1)ポータブルトイレを使用する, 2)排尿時間を設定する, 3)できるだけ食後には誘導する, 4)約20分程度, 便座に座らせる, 5)排尿から気をそらすようにする, といった定時...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 36; no. 11; p. 806
Main Authors 今西里佳, 松田久雄, 石川聡, 杉山高秀, 朴英哲, 栗田孝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.11.1999
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ISSN0034-351X

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Summary:「目的」脳血管障害における排尿障害は, リハビリテーションの予後に大きく関与する因子であり, 排尿障害の治療は神経障害発症と同時に始めなければならない. 今回, 観念運動失行を呈する症例においての排尿障害およびその訓練についての検討を行った. 「対象」脳血管障害により観念運動失行を伴った9症例(男性4名, 女性5名:平均年齢64.4歳)で, 全症例が尿便失禁状態で, 常時おむつを着用していた. 「方法」症例に対し, 1)ポータブルトイレを使用する, 2)排尿時間を設定する, 3)できるだけ食後には誘導する, 4)約20分程度, 便座に座らせる, 5)排尿から気をそらすようにする, といった定時排尿訓練を行った. 「結果」全症例が定時排尿可能となり, うち4例は24時間尿失禁なしとなった. 他の5例も夜間のみの尿失禁となった. すべての症例の尿失禁による抑鬱傾向が改善し, 様々なことに対して意欲的になった. 「結論」慢性期患者においては, 運動機能等の回復が期待できないように, 失行そのものの回復も期待できないが, 定時排尿を試みることで排尿リズムを変化させて改善される可能性が示唆された.
ISSN:0034-351X