股関節機能評価における筋力の意義

【目的】リハビリテーション医学における評価法の一つとしての股関節機能評価(股評価)は, 臨床上有用性を発揮している. 一方, 股関節周囲筋筋力の大小は股関節機能と大なる関連性を有する. したがって筋力は股評価において大きな位置を占めると考えられるが, 現行の股評価点数の中には筋力の項目が直接入っていない. そこで自験例での測定結果から股評価における筋力の意義につき検討する. 【方法】変股症に人工股関節置換術を施行し, 術後5年以上経過した64関節を対象とした. 股評価法は日整会式と疼痛項目などを配点修正した当大学式を併用し, 同時に独自開発のstrain gauge法による筋力測定装置にて,...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 27; no. 7; p. 569
Main Authors 蟹江良一, 米津賀鶴雄, 服部正広, 野々垣嘉男, 松井宣夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 01.12.1990
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ISSN0034-351X

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Summary:【目的】リハビリテーション医学における評価法の一つとしての股関節機能評価(股評価)は, 臨床上有用性を発揮している. 一方, 股関節周囲筋筋力の大小は股関節機能と大なる関連性を有する. したがって筋力は股評価において大きな位置を占めると考えられるが, 現行の股評価点数の中には筋力の項目が直接入っていない. そこで自験例での測定結果から股評価における筋力の意義につき検討する. 【方法】変股症に人工股関節置換術を施行し, 術後5年以上経過した64関節を対象とした. 股評価法は日整会式と疼痛項目などを配点修正した当大学式を併用し, 同時に独自開発のstrain gauge法による筋力測定装置にて, 等尺性外転筋の最大筋力ならびに体重比K値を求め経時的に検討した. また骨盤部CTによる大中小臀筋の画像処理結果を比較した. 【結果】病勢の進行とともに股評価点数も筋力も低下傾向を示すが, 入院時点では筋力より疼痛増大による股評価点数の減少率の方が大きい. 入院後の術前リハビリは有効で一時的に筋力は増大する. 術後リハビリ施行により入院中は股評価点数も筋力も増大するが, 退院後は訓練の短縮や中止により筋力の増加率は低下し, 回復には日数を要し, 3年目頃からは再び漸次低下傾向を示す. 股評価は疼痛減少により早期から高点を維持し, 両者間に差を認めた. 術前・後のCT像の比較で, 外転筋の断面積増加およびCT値上昇を認め, 筋萎縮の改善と筋力増大, 股評価点数上昇との関連が理解された. これらより筋力は股評価の要素として加味される必要性が高いと考えられる. 質問 久留米大志波直人:外転筋群CT撮影による断面積計測は, 外転筋群の形態上困難と思われるが, 測定方法のポイントがあれば教えていただきたい. 答 蟹江良一:CT撮影に際しては, 骨盤を正しく水平にすることが重要で, その上で腸骨稜から下方へ小転子下部まで, 1 cm幅でスライスしている. 下前腸骨棘のレベルが大中小臀筋を明瞭に区別し得るので, 同一画面での測定値の左右を比較するには都合が良い. 質問 神奈川リハ病院村瀬鎭雄:変形性股関節症における筋力の重要性については先生と同意見である. 筋力の評価は必ずしも容易でない. 外転筋の評価の一つとしてトレンデレンブルグと筋力/体重との関連について調べてあればお聞かせ下さい. 外転筋の筋力強化として何か特別, 例えば電気刺激のような工夫をされていれば教えて下さい. 答 蟹江良一:(1)筋力の低い症例では跛行を認めやすいが, 特に両者間の関連性は追求していない. (2)退院後も自分で筋強化訓練が続けられること, 特に高齢者にも理解させやすいためには, 一般的な等尺性外転筋筋力増強法を積極的に指導している. 特殊な訓練法は行っていない. 質問 門司労災病院稗田寛:(1)筋力評価を具体的にいかなる方法でするか. (2)日整会判定基準に組み込むとすると何%ぐらいを占めた方が良いか. 答 蟹江良一:(1)外転筋力測定は外来受診時も入院中も, 他の検査(股評価, サーモグラフィー等)と同時に一括して即日に行い, CTは放射線科依頼で施行している. (2)筋力の要素を股評価総点の中へ入れるには, 他の施設でも一般的に客観性をもった測定ができることが前提となる. 股関節機能における筋力の意義の重要性を考えると, 可能ならば20点分くらいは配点されるのが望ましいと思う. 現在の配点では, 疼痛がやや重視され過ぎているようである.
ISSN:0034-351X