低酸素負荷に対するリドカインの効果

1981年Astrupらは, リドカインを投与した犬で, 脳酸素消費量とグルコース消費量を測定し, 脳保護効果があることを報告した. そこでわれわれは, 種々の用量のリドカイン投与マウスの低酸素下での影響を検索した. <実験1>生後8~12週のマウス249匹を6群に分けた. それぞれに生食1ml(NS群), リドカイン20mg/kg(L20群), 40mg/kg(L40群), 60mg/kg(L60群), 80mg/kg(L80群), 120mg/kg(L120群)をi.p.し, 密閉したプラスチック容器内に入れ, 8分間5%低酸素状態にした. その状況下でのマウスの生存時間, 生...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in蘇生 Vol. 8; p. 69
Main Authors 熊谷雄一, 下地恒毅
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.05.1990
Online AccessGet full text
ISSN0288-4348

Cover

More Information
Summary:1981年Astrupらは, リドカインを投与した犬で, 脳酸素消費量とグルコース消費量を測定し, 脳保護効果があることを報告した. そこでわれわれは, 種々の用量のリドカイン投与マウスの低酸素下での影響を検索した. <実験1>生後8~12週のマウス249匹を6群に分けた. それぞれに生食1ml(NS群), リドカイン20mg/kg(L20群), 40mg/kg(L40群), 60mg/kg(L60群), 80mg/kg(L80群), 120mg/kg(L120群)をi.p.し, 密閉したプラスチック容器内に入れ, 8分間5%低酸素状態にした. その状況下でのマウスの生存時間, 生存率, 痙攣発生率を測定した. <実験2>30匹のマウスを3群に分け, 生食1ml(NS群), リドカイン40mg/kg(L40群), 80mg/kg(L80群)をi.p.し, 対照値, 投与後10分, 50分の酸素消費量を測定し, 対照値に対する%変化を求めた. <結果>平均生存時間(mean±S.E.)は, NS群320±13秒, L20群352±11秒, L40群357+10秒, L60群372±8秒, L80群272±14秒, L120群140±14秒でNS群に比べてL40, L60群は有意に生存時間が延長した. 生存率は, NS群8.8%, L20群9.5%, L40群11.9%, L60群12.3%, L80群5.3%, L120群2.3%で, L60群の生存率がもっとも高い傾向を示したが, 有意ではなかった. O_2 消費量の%変化は10分後も50分後もNS, L40, L80の3群間で有意差はなかった. <考察>以上の結果からリドカインの至適用量は低酸素での平均生存時間を延長させるが, 生存率を有意に高めることはないことが解った. リドカインが, O_2 消費量を減少させ, 生存時間を延長させたことも推測されるが, 実験2から有意なO_2 消費量の差異を認めなかったことから, 別の機序の存在も示唆された. 以上より, 痙攣を引き起こさない最大限のリドカイン濃度の投与量が生存時間延長に有効と考えられた. 痙攣による呼吸抑制に対する管理によって生存率の改善が得られるか否かについては検索中である.
ISSN:0288-4348