顎変形症のチーム・アプローチ 矯正科の役割について

顎変形症とは, 顎の先天的あるいは後天的形態異常全般を指すが, 矯正歯科領域ではおもに“咬合異常を伴う顎顔面の形態異常”として, とらえている. 顎変形症は上下顎関係に不調和をきたすため, 咀嚼障害, 言語障害を起こしやすく, 一方顔貌の不調和は審美的障害となり, 当人にとり大きな心理的障害となりうる. したがって, これら疾患に対する治療は, 機能・審美性の改善ならびに心理的抑圧を除くという点で重要である. しかし治療は広範に及ぶため, 複数科との協力が必要であり, 当歯科病院では, 矯正科, 言語治療室, 口腔外科, 補綴科によるチーム・アプローチを行っているので, その概略を紹介した....

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Published in昭和歯学会雑誌 Vol. 4; no. 1/2; p. 87
Main Authors 森光弘, 小林廣之, 鐘ヶ江晴秀, 柴崎好伸, 福原達郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学・昭和歯学会 01.09.1984
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ISSN0285-922X

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Summary:顎変形症とは, 顎の先天的あるいは後天的形態異常全般を指すが, 矯正歯科領域ではおもに“咬合異常を伴う顎顔面の形態異常”として, とらえている. 顎変形症は上下顎関係に不調和をきたすため, 咀嚼障害, 言語障害を起こしやすく, 一方顔貌の不調和は審美的障害となり, 当人にとり大きな心理的障害となりうる. したがって, これら疾患に対する治療は, 機能・審美性の改善ならびに心理的抑圧を除くという点で重要である. しかし治療は広範に及ぶため, 複数科との協力が必要であり, 当歯科病院では, 矯正科, 言語治療室, 口腔外科, 補綴科によるチーム・アプローチを行っているので, その概略を紹介した. 今回はとくに骨格性反対咬合について, 当科では術前矯正を中心に紹介した. 骨格性反対咬合は, 側貌頭部X線規格写真上(cephalogram)で∠ANBが小さく, それを補償するために上顎前歯の唇側傾斜と下顎前歯の舌側傾斜をきたす. とくに, この歯軸の特徴をdental compensationと称し, 最も大きな特徴の一つである. 術前矯正の最も大きな治療目標はdental compensationの除去である. すなわち下顎骨後退後, 理想的な前歯部の被蓋および咬頭嵌合をとるため, 上顎前歯は舌側傾斜を, 下顎前歯は唇側傾斜をさせる必要がある. 当科ではそのための歯の移動様式を, cephalogram上でpaper surgeryによる歯軸, 側貌の予測ならびに, 予測模型の作製により決定している. これらの術式を, よりわかりやすく説明するため, 今回, 初診時年齢15歳3ヵ月の女性の症例を通して, その治療経過を供覧した.
ISSN:0285-922X