Cushing症候群を呈した副腎腺腫に対しての術後(腫瘍摘出)心肺停止を来した1例

ホルモン分泌能を有する腫瘍の術後は, 種々の合併症がみられる. 副腎腫瘍によるCushing症候群に対する腫瘍摘出術直後に心肺停止を来し, 蘇生に成功した症例を経験したので報告した. 症例は64歳, 女性. 高血圧, 糖尿病にて他院通院中, CT検査にて副腎腫瘍を疑わせる所見が得られ, 当科に入院した. 臨床症状として満月様顔貌と抑鬱状態が認められた. 内分泌学的所見および画像所見から左副腎腫瘍によるCushing症候群と診断した. 全身麻酔下に腫瘤摘出術を施行した. 手術は特に問題なく終了し帰室した. また術前よりステロイド補充療法を開始した. しかし抜管約1時間後, 心肺停止を来し, 直ち...

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Published in蘇生 Vol. 10; p. 41
Main Authors 川端英孝, 原口義座, 切田学, 津端徹, 松橋亘, 佐野淳, 長谷川俊二, 石原哲
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.04.1992
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ISSN0288-4348

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Summary:ホルモン分泌能を有する腫瘍の術後は, 種々の合併症がみられる. 副腎腫瘍によるCushing症候群に対する腫瘍摘出術直後に心肺停止を来し, 蘇生に成功した症例を経験したので報告した. 症例は64歳, 女性. 高血圧, 糖尿病にて他院通院中, CT検査にて副腎腫瘍を疑わせる所見が得られ, 当科に入院した. 臨床症状として満月様顔貌と抑鬱状態が認められた. 内分泌学的所見および画像所見から左副腎腫瘍によるCushing症候群と診断した. 全身麻酔下に腫瘤摘出術を施行した. 手術は特に問題なく終了し帰室した. また術前よりステロイド補充療法を開始した. しかし抜管約1時間後, 心肺停止を来し, 直ちに各種蘇生術がなされた. 各種薬剤に加え, ステロイドも追加投与した. 意識は間もなく回復し循環動態も徐々に安定した. 蘇生後は, 人工呼吸からのweaningなどの全身管理に時間を要したが離脱した. 病理組織学上は副腎皮質原発の良性腺腫であった. 術後肺に複数の円形腫瘤像が出現し, 肺血流シンチにて血流の途絶を認めたため, 肺梗塞が強く疑われた. <考察およびまとめ>本症例の心肺停止の原因として, 麻酔からの覚醒不十分によるもの, 急性副腎不全, 肺梗塞の3つが考えられ, このうち肺梗塞が最も疑われた. 肺梗塞は肥満, 高血圧, 血液濃縮, 凝固第VIII因子の増加による血栓症が原因とされており, Cushing症候群に2~3%の頻度で合併するとの報告がみられる. これらの合併症はCushing症候群の病態と密接に関係しており慎重な対応が必要と考えられる.
ISSN:0288-4348