顎矯正手術における骨面到達法の検討‐歯齦辺縁切開によるアプローチ
齦唇移行部付近の切開は手術痕が残りやすく, 切開部に硬結をきたし, 美的にも良好な結果が得られないことがある. そこで私たちはLe Fort I型骨切り術, 下顎前方歯槽部骨切り術, およびオトガイ形成術などを行う際に, 歯齦辺縁切開によるアプローチを行っており, 比較的良好な結果が得られているのでその概要を報告する. Le Fort I型骨切り術における歯齦辺縁切開はKercherの方法を改良して行う. すなわち第二小臼歯中央部より反対側の第二小臼歯にいたる歯齦辺縁切開と同部より上外方へ向かう縦切開を加え, 上顎洞前壁, 側壁を露出させ, 骨切りを行うものである. 骨接合には可及的短いmin...
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Published in | 日本顎変形症学会雑誌 Vol. 8; no. 2; pp. 99 - 100 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本顎変形症学会
15.08.1998
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Summary: | 齦唇移行部付近の切開は手術痕が残りやすく, 切開部に硬結をきたし, 美的にも良好な結果が得られないことがある. そこで私たちはLe Fort I型骨切り術, 下顎前方歯槽部骨切り術, およびオトガイ形成術などを行う際に, 歯齦辺縁切開によるアプローチを行っており, 比較的良好な結果が得られているのでその概要を報告する. Le Fort I型骨切り術における歯齦辺縁切開はKercherの方法を改良して行う. すなわち第二小臼歯中央部より反対側の第二小臼歯にいたる歯齦辺縁切開と同部より上外方へ向かう縦切開を加え, 上顎洞前壁, 側壁を露出させ, 骨切りを行うものである. 骨接合には可及的短いminiplateを用い, 術後約1年後にminiplate直上粘膜の小さな縦切開のみで撤去する. なお最近の症例では梨状孔側縁部には吸収性miniplateを応用しており, 同部の再切開は行っていない. 下顎前方歯槽部骨切り術, オトガイ形成術では第二小臼歯より反対側の第二小臼歯にいたる歯齦縁とその両端から下方に向かう小切開を加え, 歯頸部付近の骨膜剥離を行ったのち, degloving techniqeにより下顎下縁に達するまでの骨膜剥離を行い, オトガイ部骨面を露出させて骨切りを行う. 歯齦辺縁切開は(1)口腔前庭に手術痕を全く残さず, 術後に硬結, 違和感を生ずることがない, (2)術中に左右対称性が確認できる, (3)オトガイ部骨面を広く露出できるため, オトガイ神経血管束が明示され, 骨切りは安全, 確実に行える, などの利点がある. 一方, 本法施行により歯齦退縮, および歯齦溝の増大が危惧されるため, 適応症例は前歯部の唇側歯肉溝深さの平均が2.0mm以内のものとしている. 本アプローチにより, 術後1年経過後に明らかな歯齦退縮を示したものは1例もみられず, 歯齦溝深さも平均0.5mm増大したにすぎなかった. 質問 神奈川県立こども医療センター 鳥飼勝行 このアプローチの欠点として, 縫合のしにくさを挙げていましたが, その他のcontraindicationについてはいかがでしょうか. 回答 東京歯大, 2口外 齋藤力 Contraindicationとしては, (1)歯周疾患が認められるもの(2)前歯に歯冠補綴がなされているものなどと考えています. 矯正治療により, 骨吸収をきたしたと思われる症例はなく, 全例, 施行可能でした. 質問 鹿児島大, 歯, 2口外 三村保 Le Fort I型骨切りで前方移動や下方移動を行う場合, どの程度の移動量まで本法を適用できるか. また, その場合には骨膜の減張切開などを行う必要があるのか. 回答 東京歯大, 2口外 齋藤力 Le Fort I型骨切り術における前方移動量は最大7mm程度であったが特に減張切開は必要ありませんでした. 下方へ移動した経験はありませんが, 特に減張切開を行う必要はないと考えています. |
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ISSN: | 0916-7048 |