血漿交換により著効を認めた尋常性天疱瘡の1症例
私達は, 尋常性天疱瘡に血漿交換を行い, 抗表皮細胞間抗体価の著明な低下と症状の改善をみた症例を報告する. 症例;46歳女性. 主訴;口内の糜爛と躯幹の水疱形成. 家族歴;既往歴;特記することはない. 現病歴;昭和53年12月より舌に糜爛が出現し, 約10日間で口腔全域に広がった. 昭和54年3月当日入院. 躯幹に水疱が出現した. 入院時所見;躯幹に拇指頭大の弛緩性の水疱と糜爛が散在しており, Nikolsky現象は明らかではなかった. 水疱拡散現象は認められた. 組織学的所見;表皮内(Suprabasal position)に水疱形成があり, 水疱内容にacantholytic cellが認...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 28; no. 6; pp. 593 - 594 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.12.1982
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ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | 私達は, 尋常性天疱瘡に血漿交換を行い, 抗表皮細胞間抗体価の著明な低下と症状の改善をみた症例を報告する. 症例;46歳女性. 主訴;口内の糜爛と躯幹の水疱形成. 家族歴;既往歴;特記することはない. 現病歴;昭和53年12月より舌に糜爛が出現し, 約10日間で口腔全域に広がった. 昭和54年3月当日入院. 躯幹に水疱が出現した. 入院時所見;躯幹に拇指頭大の弛緩性の水疱と糜爛が散在しており, Nikolsky現象は明らかではなかった. 水疱拡散現象は認められた. 組織学的所見;表皮内(Suprabasal position)に水疱形成があり, 水疱内容にacantholytic cellが認められた. また免疫学的にも抗表皮細胞間抗体価は, 640倍陽性であった. 以上より尋常性天疱瘡として, ステロイド剤, 免疫抑制剤, 金製剤を使用したが, いずれも効果なくステロイド剤の副作用の肥満, Moon face, 高血圧, 筋力低下が出現していた. 血漿交換は昭和56年9月に5回行った. IBM2997を用い, 交換液は凍結血漿を1回につき2,000ml~2,500ml使用した. その結果表皮細胞間抗体は直前が1,280倍だったものが3回目には160倍と著明に低下した. ヘモグロビン, 血清蛋白に変化はなかった. 臨床症状は, 血漿交換後3日目より著明な改善があり, 糜爛の縮少乾燥が認められ, 特に頭皮部で明らかであった. まとめ血漿交換にて抗表皮細胞間抗体が低下し, それに伴い皮膚所見の改善した難治性の尋常性先天性天疱瘡を報告した. |
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ISSN: | 0546-1448 |