心室頻拍を呈した急性一酸化炭素中毒の1例

高濃度の一酸化炭素暴露により, 心筋壊死や房室解離などが惹起されることはよく知られている. 今回, 急性一酸化炭素中毒の治療中に心室頻拍を呈し, その原因として単に心筋障害だけでなく呼吸性アルカローシスに伴う電解質異常が大きく関与したと考えられた1例を経験したので若干の考察を加え報告する. <症例>閉めきった和室で練炭を使用し, 意識消失状態にて当科搬入された. 入室時, 意識レベル100(JCS). 搬入時の血中Co-Hb量は測定されていないが, 発現時の状況などから急性一酸化炭素中毒と診断し, 一酸化炭素排泄目的に気管内挿管下に調節呼吸を開始した. 第2病日には血中Co-Hb量...

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Published in蘇生 Vol. 9; p. 75
Main Authors 小野木豊, 小川彦一郎, 石田浩一郎, 安達昌宏, 宮本史生, 多田研三, 浦田哲郎, 小泉伊左夫, 加藤裕明, 向坂雅登, 林廣之, 熊谷公利, 竹越襄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.04.1991
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Summary:高濃度の一酸化炭素暴露により, 心筋壊死や房室解離などが惹起されることはよく知られている. 今回, 急性一酸化炭素中毒の治療中に心室頻拍を呈し, その原因として単に心筋障害だけでなく呼吸性アルカローシスに伴う電解質異常が大きく関与したと考えられた1例を経験したので若干の考察を加え報告する. <症例>閉めきった和室で練炭を使用し, 意識消失状態にて当科搬入された. 入室時, 意識レベル100(JCS). 搬入時の血中Co-Hb量は測定されていないが, 発現時の状況などから急性一酸化炭素中毒と診断し, 一酸化炭素排泄目的に気管内挿管下に調節呼吸を開始した. 第2病日には血中Co-Hb量は正常範囲であった. 同日, 突然の心室頻拍が出現し数秒で洞調律へ復したが, 短時間に同様の頻拍を繰り返した. 洞調律時の心電図では, QT時間延長とU波の癒合とも思われる巨大T波を認めた. このときの血中Caは軽度低下し, 血液ガス分析でP_CO2 の低下と高度の呼吸性アルカローシスを認めた. Ca剤投与と呼吸性アルカローシスの是正により, その後心室頻拍の出現を認めなかった. また, 心筋スキャンでも重篤なものは考えられなかった. <考察>一酸化炭素の心臓に及ぼす変化は, Co-Hb形成による組織の低酸素状態に基づくものであると報告されており, また動物実験から一酸化炭素暴露により冠動脈スパズム, 塞栓, 壊死が誘発されると報告されている. 本例では, 一酸化炭素暴露による何らかの心筋への影響は否定できないが, 心室頻拍の主たる原因としては, むしろ過換気による呼吸性アルカローシスが電解質異常, 特にCaイオンの減少を引き起こし, QT時間の延長と引き続いてatypical bentricular tachycardiaを誘発したものと考えられた.
ISSN:0288-4348