咬筋肥大症の手術経験

咬筋肥大症は審美的障害のほかに, 時には開口障害, 咀嚼障害, 顎関節障害などの機能障害を伴う疾患で, 1880年Leggが最初に報告して以来, 本邦での報告は数例にすぎない. われわれは最近本症の2症例を経験したので報告する. 症例1:22歳男性, 初診の約5ヵ月前に両側下顎角部の無痛性膨隆に気づき某外科および某歯科を受診し, 診断不明のため当科を紹介されて来院した. 顔貌は両側下顎角部に膨隆を認め, 強く咬みしめたときに両側咬筋部に硬い膨隆を触知した. 口腔内所見に特記すべき事項はなく, bruxismなどの習癖も認められなかった. 正貌頭部X線所見で両側下顎角部に骨の外部への突出を認め,...

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Published in昭和歯学会雑誌 Vol. 3; no. 1; p. 142
Main Authors 吉屋誠, 筒井重行, 桜田重世, 和田明, 木村義孝, 南雲正男, 吉村節
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学・昭和歯学会 01.09.1983
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Summary:咬筋肥大症は審美的障害のほかに, 時には開口障害, 咀嚼障害, 顎関節障害などの機能障害を伴う疾患で, 1880年Leggが最初に報告して以来, 本邦での報告は数例にすぎない. われわれは最近本症の2症例を経験したので報告する. 症例1:22歳男性, 初診の約5ヵ月前に両側下顎角部の無痛性膨隆に気づき某外科および某歯科を受診し, 診断不明のため当科を紹介されて来院した. 顔貌は両側下顎角部に膨隆を認め, 強く咬みしめたときに両側咬筋部に硬い膨隆を触知した. 口腔内所見に特記すべき事項はなく, bruxismなどの習癖も認められなかった. 正貌頭部X線所見で両側下顎角部に骨の外部への突出を認め, needle biopsyでは正常の横紋筋組織がみられた. 両側咬筋肥大症の診断のもとに, 昭和57年4月16日GOE全身麻酔下で, Obwegeser-Beckers法による外科的整形手術を施行した. 術式は下顎枝前縁上方部から下顎第1大臼歯の歯肉頬移行部に粘膜切開を加えて咬筋を露出させ, 筋腹を浅層と深層に分割して深層筋膜を切除した. 次に外方に突出した下顎角部の骨を左右とも可及的に削除した, 術後顔貌は左右対称となり, 12日目に機能障害もなく軽快退院した. 症例2:22歳男性. 左側下顎角部の膨隆を主訴として来院した. 強く咬合すると左側咬筋部が膨隆し弾性硬となった. 口腔内所見に異常はなく, 習癖もみられなかった. needle biopsyの結果は正常の横紋筋組織であった. 左側咬筋肥大症の診断のもとにObwegeser-Beckers法により左側咬筋を切除したが, 骨の外方への突出はなかったので骨削除は行わなかった. 術後に顔貌は対称となり, profileも改善され8日目に軽快退院した. 今回われわれは咬筋肥大症の2症例に遭遇し, 口内法によるObwegeser-Beckers法整形手術を施行した. 骨の突出を認める症例1は骨削除も行い, 骨の突出がない症例2は咬筋切除のみで良好な結果が得られた.
ISSN:0285-922X