MSI陽性腫瘍のスクリーニング検査

Microsatellite Instability (MSI)は胃癌, 大腸癌等の約10-20%に認められ, ミスマッチ修復の異常を示すphenotypic markerと考えられる. MSI陽性大腸癌の一部には遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)が認められる他, 約80%の症例でhMLH1遺伝子のプロモーターのメチル化が報告されている. MSI陽性のがん患者では多重多発癌に対する罹患のリスクが高いことがRetrospectiveな解析で報告されている. 我々は栃木県立がんセンターにおける胃癌, 大腸癌, 子宮癌等の手術症例を対象としてMSI解析を行う研究計画を作成し, 倫理委員会の承諾...

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Published in家族性腫瘍 Vol. 1; no. 2; p. 35
Main Authors 市川明, 石原雅巳, 稲田高男, 固武健二郎, 菅野康吉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 家族性腫瘍研究会 15.05.2001
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Summary:Microsatellite Instability (MSI)は胃癌, 大腸癌等の約10-20%に認められ, ミスマッチ修復の異常を示すphenotypic markerと考えられる. MSI陽性大腸癌の一部には遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)が認められる他, 約80%の症例でhMLH1遺伝子のプロモーターのメチル化が報告されている. MSI陽性のがん患者では多重多発癌に対する罹患のリスクが高いことがRetrospectiveな解析で報告されている. 我々は栃木県立がんセンターにおける胃癌, 大腸癌, 子宮癌等の手術症例を対象としてMSI解析を行う研究計画を作成し, 倫理委員会の承諾を得て本年1月から開始している. MSI陽性例については術後のフォローアップ検査の必要性あるいは家族歴から遺伝的素因が疑われる場合にHNPCC等の遺伝子検査についての説明を行うために遺伝相談外来の受診を勧めている. 本研究の実施に先立って, 多種類のマーカーを使用したMSI解析を短時間で行うための遺伝子検査システムを構築したので, 紹介する. 方法:D5S346, D17S250, D2S123, BAT25, BAT26, BAX, TGFβnR, hMsH3, hMsH6, MBD4 A(10), MBD4 A(6)の11種類のマイクロサテライトマーカーを使用した. 各プライマーはFAM, TET等の蛍光色素で標識したものを使用した. PCR試薬の調製およびDNAの分注はMulti PROBE IIEx (Packard社)を使用して行った. PCR施行後のMSIの解析はキャピラリーシーケンサーABI310(PE社)を使用した. 結果:基礎的検討を含め, 約3ヶ月で230症例の大腸癌を解析し, 32例のMSI-Hと2例のMSI-Lを検出することができた. 本システムでは煩雑な手作業を要する部分について, ロボットによる自動化を進めた結果, ハイスループットの解析が可能となった. 今後, 本システムを活用し, 更に多数の症例を対象とした多施設共同研究を実施する予定である.
ISSN:1346-1052