輸血後B型肝炎の防御に対するHBc抗体測定の意義

I. 目的:HBs抗原のスクリーニングにもかかわらず, 稀ながら輸血後B型肝炎は発生していた. この発生を更に減らすために輸血血液のHBVマーカーを測定し, HBc抗体検出の意義を検討した. II. 対象と方法:当院で1986年5月より1988年10月までの間に, 受血者2,038人(輸血血液本数78,746単位)の内, 輸血後B型肝炎は6例(内1例は劇症肝炎)で, この6例に用いられた血液は341単位であった. この6例の患者血液と輸血血液とを対象にして, HBVマーカーを測定した. 測定項目はHBs抗原, HBc抗体, 更に因果関係確認のためPCR法によるHBV-DNA(RI法), また劇...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 36; no. 2; p. 276
Main Authors 小安美佐子, 福島浩一, 伊丹直人, 土持恒人, 神田裕三, 服部理男, 田中建志, 飯塚久雄, 石島あや子, 岡崎正太郎, 津田文男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.05.1990
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Summary:I. 目的:HBs抗原のスクリーニングにもかかわらず, 稀ながら輸血後B型肝炎は発生していた. この発生を更に減らすために輸血血液のHBVマーカーを測定し, HBc抗体検出の意義を検討した. II. 対象と方法:当院で1986年5月より1988年10月までの間に, 受血者2,038人(輸血血液本数78,746単位)の内, 輸血後B型肝炎は6例(内1例は劇症肝炎)で, この6例に用いられた血液は341単位であった. この6例の患者血液と輸血血液とを対象にして, HBVマーカーを測定した. 測定項目はHBs抗原, HBc抗体, 更に因果関係確認のためPCR法によるHBV-DNA(RI法), また劇症肝炎例では輸血血液中と患者血清中のHBV-DNAをPCR法を用いて, pre-core領域及びgene-s領域を増幅しその核酸配列をも対比した. III. 結果:輸血後B型肝炎を起こした6例に用いられた輸血血液にHBs抗原は検出されなかった. HBc抗体の2^10 以上を示した検体は症例1で6単位中1単位(1/6)症例2は3/124, 症例3は1/12, 症例4は1/17, 症例5は1/114であった. また症例6は68単位中1単位が2^5 を示したのみであった. PCR法で測定し得たHBc抗体の高い3検体(症例3, 4, 5)の内, 3, 5にHBV-DNAが検出された. 劇症肝炎例ではHBc抗体の高い(>2^12 HI単位)輸血血液と患者血清からのHBV-DNAのpre-core領域とgene-s領域とで核酸配列が一致した. IV. 結論:6例のいずれにも使用された輸血血液の中に高力価HBc抗体陽性血液が少なくとも1本含まれ, PCR法によってHBV-DNAが検出された. 以上の事から, 高力価のHBc抗体陽性血液を除去することが, low levelのHBV carrierを除外し, 輸血後B型肝炎の予防に有効であろうと推定された. 1988年12月から高力価HBc抗体陽性血液を除外した輸血を行っているが, その結果についても報告する予定である.
ISSN:0546-1448