小児重症脳外傷の1例

重症脳外傷の機能的予後は一般に不良とされている. しかし今回経験した小児例の回復は極めて良好であったので報告し, 成人例との比較を行いたい. 「症例」12歳, 女児. 左利き. 道路横断中に車にはねられ16m程飛ばされた. 救急病院に搬送された時点でGCS=5, 気管内挿管が行われた. 右前頭部陥没骨折, 右大腿骨骨折, 右腓骨骨折, 頭部CTにてびまん性脳腫脹, 右前頭葉内血腫, 右硬膜外血腫を認め開頭血腫除去術が行われた. 脳圧がモニターされ, 最高時88mmHgに達した. 受傷より3ヵ月経過し, 身体的にはほぼ問題なく回復し, 両親としては, 知能, 記憶にはなんら障害がないと感じ復学も...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 37; no. 12; pp. 1044 - 1045
Main Authors 渡邉修, 宮野佐年, 冨田祐司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.12.2000
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ISSN0034-351X

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Summary:重症脳外傷の機能的予後は一般に不良とされている. しかし今回経験した小児例の回復は極めて良好であったので報告し, 成人例との比較を行いたい. 「症例」12歳, 女児. 左利き. 道路横断中に車にはねられ16m程飛ばされた. 救急病院に搬送された時点でGCS=5, 気管内挿管が行われた. 右前頭部陥没骨折, 右大腿骨骨折, 右腓骨骨折, 頭部CTにてびまん性脳腫脹, 右前頭葉内血腫, 右硬膜外血腫を認め開頭血腫除去術が行われた. 脳圧がモニターされ, 最高時88mmHgに達した. 受傷より3ヵ月経過し, 身体的にはほぼ問題なく回復し, 両親としては, 知能, 記憶にはなんら障害がないと感じ復学も達成できたが, 高次脳機能評価を希望され当科を受診した. Kohs立方体検査:粗点85. ウエックスラー小児用知能検査:言語性IQ=105/動作性IQ=107, 群指数は言語理解=109/知覚統合=107/注意記憶=91/処理速度=94. ベントン視覚記銘検査(施行法D, 形式II):正確数8, 誤謬数4(年齢相応). 以上より, 知能, 視覚記銘(15秒後の遅延再生)の良好な成績に比べ, 若干の注意記憶, 処理速度の低下が明らかとなった. 「考察」本症例は重症の脳外傷であったが知能は良好な回復をみせた. しかしADLの上で正常と思われても, 精査にて問題処理速度の低下が浮き彫りとなった. 我々はかつて, このような重症の成人脳外傷者について高次脳検査を行い, ほぼ全例で宣言性記憶の重度な低下と動作性知能の低下を報告した. 小児例の特殊性が明らかとなった.
ISSN:0034-351X