Dispase処理赤血球に対するヒトplasma中のIgG抗体

【目的】DispaseはBacillus属菌株の培養液より精製された蛋白分解酵素で, 培養細胞の分散などに用いられている. ヒトplasma中に, この酵素で処理した赤血球を凝集する抗体の存在することは, すでに報告した. 今回は, その抗体の性質をラジオイムノアッセイ法を用いて検討したので報告する. 【方法】Dispase処理赤血球は, 10, 000PU/mlに調整したDispase(合同酒精)溶液に, 等量の洗浄赤血球を混合し37℃にて4時間反応させた後, 生理的食塩水で4回洗浄したものを用いた. IgG分画はA型9例, B型9例, O型10例, AB型10例(合計38例)の健常人のAC...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 36; no. 2; p. 362
Main Authors 近江俊徳, 梶井英治, 池本卯典
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.05.1990
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Summary:【目的】DispaseはBacillus属菌株の培養液より精製された蛋白分解酵素で, 培養細胞の分散などに用いられている. ヒトplasma中に, この酵素で処理した赤血球を凝集する抗体の存在することは, すでに報告した. 今回は, その抗体の性質をラジオイムノアッセイ法を用いて検討したので報告する. 【方法】Dispase処理赤血球は, 10, 000PU/mlに調整したDispase(合同酒精)溶液に, 等量の洗浄赤血球を混合し37℃にて4時間反応させた後, 生理的食塩水で4回洗浄したものを用いた. IgG分画はA型9例, B型9例, O型10例, AB型10例(合計38例)の健常人のACD血より先ず, それぞれのplasmaを分離し, 次いで, 33%飽和で硫安塩析を行った後, リン酸緩衝液(PBS)で4日間透析後用いた. IgG感作Dispase処理赤血球は, IgG分画溶液に等量のDispase処理赤血球を加えて混合し37℃にて2時間感作後, 生理的食塩水で6回洗浄したものを用いた. 赤血球膜IgGの定量はJejeらの方法によって実施した. 【結果および考察】赤血球膜上のIgG分子数を, 健常人56例について求めたところ, 赤血球1個あたり14-58個のIgG分子を認め, 平均値(mean±SD)は34±15個であった. また, IgG分画と反応させたDispase処理赤血球についてもIgG分子数を求めたところ, 赤血球1個あたりに結合するIgGの平均値(mean±SD)は, A型9例では592±236, B型9例では431±109, O型10例では615±198, AB型10例では543±252であり, 合計38例の平均値は547±211であった. 以上の結果より, ヒトplasma中のDispase処理赤血球に対する抗体活性は, これまでに報告されているIgMクラスの他に, IgGクラスの免疫globulinにも存在することが明らかとなった. なお, このIgG抗体は自己のDispase処理赤血球にも反応することよりnatural autoantibodyと推測され, 今後自己免疫の発生機序を解明するうえに重要な情報を提供するものと期待される.
ISSN:0546-1448