当院への救急車搬送の検討

1989年4月から1990年3月までの1年間に当院へ救急車搬送されてきた患者延べ131例について検討を加えた. 搬送依頼は県内の医療機関からが全体の75%で, 公立の基幹的医療施設がその半数であった. そのほかの25%は通院治療中の患者であった. 年齢分布では乳児に最も多く全体の22%29例で, 1歳以下が半数を占める. 症状で多いのは痙攣であり27例21%, 次いで呼吸困難が24例18%, 嘔吐, 腹痛などの消化器症状が20例15%, 意識レベルの低下は18例14%, そのほかチアノーゼ, 発熱などの順で多かった. 病院間の転送が多いために不慮の事故に起因した救急疾患は少ない. 原因疾患別で...

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Published in蘇生 Vol. 9; p. 37
Main Authors 羽鳥文麿, 大畑淳, 須藤知子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.04.1991
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Summary:1989年4月から1990年3月までの1年間に当院へ救急車搬送されてきた患者延べ131例について検討を加えた. 搬送依頼は県内の医療機関からが全体の75%で, 公立の基幹的医療施設がその半数であった. そのほかの25%は通院治療中の患者であった. 年齢分布では乳児に最も多く全体の22%29例で, 1歳以下が半数を占める. 症状で多いのは痙攣であり27例21%, 次いで呼吸困難が24例18%, 嘔吐, 腹痛などの消化器症状が20例15%, 意識レベルの低下は18例14%, そのほかチアノーゼ, 発熱などの順で多かった. 病院間の転送が多いために不慮の事故に起因した救急疾患は少ない. 原因疾患別では神経系疾患が最も多く38例29%で3分の1, 消化器系23例18%, 呼吸器系21例16%, 循環器系15例12%であった. 救急車搬送されてきた症例の多くは一般病棟へ入院し何らかの処置を必要としていたが, 一方10%強の例については直ちに集中治療を必要としていた. このような例は, 発症時から当院へ来院するまでの経過中にどのような治療や処置が行われるかによってその後の予後や経過を左右すると考えられる. 救急搬送されてきた症例の中で, 来院後に直ちに呼吸循環管理が必要であった例は46例35%であった. この中で9例には気管内挿管とその後の人工呼吸管理が必要であった. 内1例はDOA症例であった. またこれらの症例の搬送時に医師あるいは看護婦が同乗してきたのは9件中4件のみであった. 転送されてくる患者が急変するかどうかの予想は初診の医師の判断が重要であるが, 依頼された側からの積極的なかかわり合いも患者の予後に影響し得るとも考えられる. 重症小児の治療に集中治療体制が成果を上げつつあるが, 今後の課題としては一方で小児の救急搬送体制をより充実させる必要がある. しかし現実には搬送医療チームの編成すらも困難な状況であり, 今後検討して行くべき重要な課題の一つと考えられる.
ISSN:0288-4348