膝前十字靱帯損傷症例の歩行解析

前十字靱帯損傷症例21症例21関節(ACL損傷群)と健常成人30例30関節(健常者群)の歩行を運動学的および運動力学的に測定し, 比較検討した. 測定は赤外線反射式動作分析装置と床反力計を使用した. 健常者群では, 立脚初期には大腿が平行移動するため大腿の傾斜角速度はきわめて少ないが, ACL損傷群では踵接地直後から約20 deg/secの角速度を有していた. ACL損傷群では膝の屈曲角度の変化が少なく, 立脚初期の屈曲方向への角速度が少なかった. 床反力は, ACL損傷群では立脚期前半の制動方向の力が少なかった. Andriacchiらは, 立脚期前半の膝屈曲方向のモーメントがACL損傷症例...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 33; no. 2; p. 134
Main Authors 富安聡, 本庄宏司, 服部友一, 丹羽滋郎, 山本隆博
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.02.1996
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Summary:前十字靱帯損傷症例21症例21関節(ACL損傷群)と健常成人30例30関節(健常者群)の歩行を運動学的および運動力学的に測定し, 比較検討した. 測定は赤外線反射式動作分析装置と床反力計を使用した. 健常者群では, 立脚初期には大腿が平行移動するため大腿の傾斜角速度はきわめて少ないが, ACL損傷群では踵接地直後から約20 deg/secの角速度を有していた. ACL損傷群では膝の屈曲角度の変化が少なく, 立脚初期の屈曲方向への角速度が少なかった. 床反力は, ACL損傷群では立脚期前半の制動方向の力が少なかった. Andriacchiらは, 立脚期前半の膝屈曲方向のモーメントがACL損傷症例では著しく減少することを報告した(quadriceps avoidance gait). ACL損傷群では, 下腿を前方に引き出す大腿四頭筋の作用を減少させるために, 立脚初期から大腿を前方に傾斜させ, 結果的に膝の屈曲の少ない歩行(屈曲モーメントの減少した歩行)を行っていると考える.
ISSN:0034-351X