著しい血小板減少症が持続した敗血症の1症例

われわれは著しい血小板減少症を伴う敗血症を経験したので報告する. 〈症例〉41歳女性, 妊娠17週. 習慣性流産を指摘されていた. 入院3日前, 他院にて羊水検査を受けた. 入院2日前より発熱. 入院前日近医(産婦人科開業医)受診, 入院この時点で胎児の死亡を確認. 入院当日近医より本院産婦人科に転送され, 子宮内容掻爬されるも, 発熱が続いた. ドパミン使用を開始したが血圧低下が続き, 出血傾向も認め, ICU入室となった. 〈ICU入室後経過〉入室時血圧60台, 心拍数150台で, 敗血症を疑いノルアドレナリンの使用を開始した. また, 子宮掻爬部からの出血も続き, 血色素が6g/dlとな...

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Published in蘇生 Vol. 19; no. 3; p. 241
Main Authors 伊藤辰哉, 濱西潤三, 古谷秀勝, 平方秀男, 足立健彦, 福田和彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 12.10.2000
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Summary:われわれは著しい血小板減少症を伴う敗血症を経験したので報告する. 〈症例〉41歳女性, 妊娠17週. 習慣性流産を指摘されていた. 入院3日前, 他院にて羊水検査を受けた. 入院2日前より発熱. 入院前日近医(産婦人科開業医)受診, 入院この時点で胎児の死亡を確認. 入院当日近医より本院産婦人科に転送され, 子宮内容掻爬されるも, 発熱が続いた. ドパミン使用を開始したが血圧低下が続き, 出血傾向も認め, ICU入室となった. 〈ICU入室後経過〉入室時血圧60台, 心拍数150台で, 敗血症を疑いノルアドレナリンの使用を開始した. また, 子宮掻爬部からの出血も続き, 血色素が6g/dlとなり, 輸血を始めた. その後も出血が続き, ノルアドレナリン0.5μg/kg/ml使用したが血圧60台, 心拍数160台と改善を認めなかった. 血小板数は濃厚血小板輸血で一時的に上昇するが, すぐに1万/dl以下となった. 緊急開腹術となり, 子宮全摘, 両側附属器切除, S状結腸切除, 人工肛門造設術が行われた. 手術中もICU入室時と同じく低血圧と頻脈が続く循環動態であった. 〈手術後経過〉ICU帰室後, その日より2日間にわたりエンドトキシン吸着を行い, その後3日間血漿交換を行った. その過程で徐々に循環動態が安定し, ドパミン3μg/kg/mlのみで, 血圧120台, 心拍数90台と安定した. AT-IIIやフィブリノーゲンも回復し, 出血傾向も改善したが, 血小板数は低く, 1万/dl以下が続いた. TTPか疑われたが, 諸検査により, 否定された. 循環動態安定後さらに2日後から血小板数は上昇を始め, 手術後1週間で12万/dlまで上昇した. ICU入室から10日目, 一般病棟に退室した. 〈結語〉著しい血小板減少症が持続した敗血症の1症例を経験した. 血小板数は臨床症状の改善に遅れて回復した.
ISSN:0288-4348