くも膜下出血が誘因と考えられる術中心停止に至ったQT延長症候群の一症例

今回われわれは, 術中心停止に至った二次性QT延長症候群の1症例を経験したので報告する. [症例]58歳, 女性. 既往歴に高血圧, 脳梗塞があった. 前交通動脈の動脈瘤破裂にてクリッピング術及び脳室ドレナージ術が予定された. 意識レベルはJCS II-3であった. 術前心電図検査で広範囲の陰性T波, QTc延長(0.63msec)を認めた. 血液検査所見では特に異常を認めなかった. 前投薬は行なわず, 手術室入室後各種モニターを装着し, 麻酔の導入を開始した. フェンタニール0.2mg, ディアゼパム10mg, チオペンタール200mgにより導入を行ない, 酸素・笑気・セボフルランとフェンタ...

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Published in蘇生 Vol. 17; no. 3; p. 218
Main Authors 山口重樹, 恵川宏敏, 鷹西敏雄, 濱口眞輔, 奥田泰久, 北島敏光
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.09.1998
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Summary:今回われわれは, 術中心停止に至った二次性QT延長症候群の1症例を経験したので報告する. [症例]58歳, 女性. 既往歴に高血圧, 脳梗塞があった. 前交通動脈の動脈瘤破裂にてクリッピング術及び脳室ドレナージ術が予定された. 意識レベルはJCS II-3であった. 術前心電図検査で広範囲の陰性T波, QTc延長(0.63msec)を認めた. 血液検査所見では特に異常を認めなかった. 前投薬は行なわず, 手術室入室後各種モニターを装着し, 麻酔の導入を開始した. フェンタニール0.2mg, ディアゼパム10mg, チオペンタール200mgにより導入を行ない, 酸素・笑気・セボフルランとフェンタニールにより麻酔を維持した. 気管内挿管, 三点固定装着, 執刀, 硬膜切開時に大きな循環動態の変動は認められなかった. 心電図II誘導では陰性T波, QTc延長を認めるのみで, 心室性不整脈の出現はなかった. 手術開始約3時間後に突然心室性期外収縮が出現し, 引き続いて多源性二段脈, 心室頻拍へ移行し, 心停止に至った. 約20分間の蘇生後, 洞調律に回復した. その後, 手術を再開したが, 心室頻拍を起こすこと無く, 無事手術が終了した. 手術終了後は, 集中治療室に入室し経過観察を行なったが, たびたび心室頻拍に移行し, 術後5日目に心肺蘇生のかいなく心室頻拍から心停止に至り, 死亡した. [結語]くも膜下出血によって誘発されたと考えられるQT延長症候群で心停止に至った症例を経験した.
ISSN:0288-4348