HCV抗体検査(第2世代)導入後の輸血後肝炎発生状況について

『目的』輸血用血液に対する第1世代HCVスクリーニングの導入による輸血後C型肝炎の発生率の減少に限界(70%程度)があったのは, 第1世代スクリーニング用キットがc100-3抗体しか検出できないため偽陰性を生じることが主な原因であった. このため, 血液センターではNS3及びコアに対する抗体も同時に検出できる第2世代試薬(PHA法)によるスクリーニングを平成4年より導人した. 我々は第2世代スクリーニングの効果を検討することを目的として, 導入前後の一定期間内に輸血された症例について輸血後の状況を調査したので報告する. 『方法」旭川市内の3医療機関で, 輸血後1年間追跡が可能と判断された患者の...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 40; no. 2; p. 314
Main Authors 藤原義一, 鹿野徳憲, 本田盈, 古本博, 齊藤久美子, 加藤志津夫, 山本哲, 池田久實, 神田誠, 幸田久平, 伊原弘美, 加藤俊明, 関口定美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.05.1994
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ISSN0546-1448

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Summary:『目的』輸血用血液に対する第1世代HCVスクリーニングの導入による輸血後C型肝炎の発生率の減少に限界(70%程度)があったのは, 第1世代スクリーニング用キットがc100-3抗体しか検出できないため偽陰性を生じることが主な原因であった. このため, 血液センターではNS3及びコアに対する抗体も同時に検出できる第2世代試薬(PHA法)によるスクリーニングを平成4年より導人した. 我々は第2世代スクリーニングの効果を検討することを目的として, 導入前後の一定期間内に輸血された症例について輸血後の状況を調査したので報告する. 『方法」旭川市内の3医療機関で, 輸血後1年間追跡が可能と判断された患者の検体について, 輸血前後のHCV抗体(PHA法), HBs抗原及び肝機能検査を実施した. 抗体が陽転化した検体については, さらにHCV-RNAを含むウィルスマーカーを検討した. 『結果及びまとめ』第1世代スクリーニングでは2ヶ月間にエントリーされた74例のうち, 追跡可能であった59例からHCV抗体陽性例や肝機能異常例を除いた39例について検討した. このうち3例で一時的にPHAの陽転化(低力価)を認めたが肝炎の発症はなく, 第2世代EIA, HCV-RNAともに陰性であった. 第2世代スクリーニングでは10ヶ月間にエントリーされた476例のうち, 追跡可能であった279例からHCV抗体陽性例や肝機能異常例を除いた203例について検討した. 3例に一過性のPHA陽転が認められ, このうち2例は第2世代EIA法でも陽性と判定されたが, HCV-RNAは陰性で肝炎の発症はなかった. 一過性のPHAの陽転原因については不明であったが他のウィルスマーカー, RNA, 抗体価の上昇の有無等から輸血によるものとは考えずらかった. 以上, 10ヶ月間の追跡で明らかなPTHは発生しておらず, 我々が導入した第2世代スクリーニング検査法は有用であったと考える.
ISSN:0546-1448