脳虚血再灌流障害におけるプロポフォールの抗酸化作用についての検討

近年, プロポフォールが脳保護作用を有するとの報告がみられる. 今回, プロポフォールの脳保護作用のメカニズムを検討するため, 脳虚血再灌流障害におけるプロポフォールの抗酸化作用について検討したので報告する. 〔方法〕スナネズミの前脳虚血モデルを用いて, 以下の5群について検討した. I群:sham手術+生理食塩水. II群:前脳虚血+生理食塩水. III群:前脳虚血+プロポフォール50mg/kg. IV群:前脳虚血+プロポフォール100mg/kg. V群:前脳虚血+プロポフォール150mg/kg. なお, 生理食塩水, プロポフォールの投与は前脳虚血ないしsham手術施行前30分前に腹腔内投...

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Published in蘇生 Vol. 19; no. 3; p. 243
Main Authors 恵川宏敏, 山口重樹, 卜部和昌, 奥田泰久, 北島敏光
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 12.10.2000
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Summary:近年, プロポフォールが脳保護作用を有するとの報告がみられる. 今回, プロポフォールの脳保護作用のメカニズムを検討するため, 脳虚血再灌流障害におけるプロポフォールの抗酸化作用について検討したので報告する. 〔方法〕スナネズミの前脳虚血モデルを用いて, 以下の5群について検討した. I群:sham手術+生理食塩水. II群:前脳虚血+生理食塩水. III群:前脳虚血+プロポフォール50mg/kg. IV群:前脳虚血+プロポフォール100mg/kg. V群:前脳虚血+プロポフォール150mg/kg. なお, 生理食塩水, プロポフォールの投与は前脳虚血ないしsham手術施行前30分前に腹腔内投与した. 前脳虚血ないしsham手術施後5日目に脳を摘出し, 海馬CA1の病理組織学的検討と脂質の過酸化について観察した. 脂質の過酸化は組織中のmalondialdehyde(MDA)を測定して評価した. 〔結果〕I群に比較して, 前脳虚血を施行したII群では海馬CA1錐体細胞の障害およびMDAの増加が観察された. しかし, III, IV, V群では, II群で観察された病理学的変化, MDAの増加は観察されなかった. プロポフォールの投与後, III群では軽い鎮静, IV群では深い鎮静, V群では深い麻酔作用が得られた. 〔結語〕短時間の脳虚血後に生じる海馬CA1錐体細胞の障害はプロポフォールの投与により抑制され, この効果はプロポフォールの抗酸化作用によるものでると推察された. また, このプロポフォールの脳保護作用は軽い鎮静下でも観察された.
ISSN:0288-4348