下顎前歯部歯槽骨切り術・オトガイ形成術施行後に癒合不全を呈した下顎前突症の1例

「緒言」近年, 顎矯正手術に対する社会的認知の向上により顎矯正手術を施行する症例が増えている. そのため顎矯正手術は, 様々な施設で広く行われている1-6). 顎変形症の多くは歯列不正を認め, 良好な咬合関係が得られていないことが多いが, 患者は適切な咬合での咀嚼経験が乏しいため, 時として顔貌の改善のみを希望することがある. その結果, 術前に歯列に対する十分な治療を行わずに顎矯正手術を施行した場合, 術直後における咬合の安定が得られにくいことは十分に考えられる. 一般的に, 顎変形症の診断と治療において, 術前に適切な咬合を確保してから顎矯正手術を行い, 術後も十分な咬合の安定を確保するこ...

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Published in日本顎変形症学会雑誌 Vol. 20; no. 3; pp. 251 - 257
Main Authors 江原雄一, 田中四郎, 式守道夫, 伊藤友里, 松原誠, 太田貴久, 細原政俊, 笠井唯克, 住友伸一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本顎変形症学会 15.08.2010
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ISSN0916-7048

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Summary:「緒言」近年, 顎矯正手術に対する社会的認知の向上により顎矯正手術を施行する症例が増えている. そのため顎矯正手術は, 様々な施設で広く行われている1-6). 顎変形症の多くは歯列不正を認め, 良好な咬合関係が得られていないことが多いが, 患者は適切な咬合での咀嚼経験が乏しいため, 時として顔貌の改善のみを希望することがある. その結果, 術前に歯列に対する十分な治療を行わずに顎矯正手術を施行した場合, 術直後における咬合の安定が得られにくいことは十分に考えられる. 一般的に, 顎変形症の診断と治療において, 術前に適切な咬合を確保してから顎矯正手術を行い, 術後も十分な咬合の安定を確保することが望ましい7-9). したがって, 術後における咬合の安定が得にくいと考えられる顎矯正手術の場合, 術前術後の咬合管理はより重要と考えられる. 今回われわれは, 他院で下顎前突症の診断で前歯部歯槽骨切り術とオトガイ部下顎下縁切除によるオトガイ形成術を同時に施行後, 下顎左側犬歯歯根露出, 下顎左側犬歯, 第二小臼歯間部下顎骨骨折と歯槽骨切り部の癒合不全を認めた下顎前突症の1例を経験したので, 若干の文献的考察を加えその概要を報告する.
ISSN:0916-7048