経頭蓋磁気刺激が効果を示した瀰漫性軸索損傷の1例

瀰漫性軸索損傷は, 有効な治療法がなく自然回復を期待するしかなかった疾患である. 今回我々は, 同疾患の患者に経頭蓋磁気刺激を試み, 有効な結果を得たので報告する. 「症例」19歳男性. 平成8年10月7日, バイク事故にて頭部を打撲. 画像診断にて頭部に異常なく, 瀰漫性軸索損傷と診断される. 受傷後, 遷延性意識障害が続いたが, 平成9年中頃より開眼, 発声, 四肢の動きが見られ, 平成10年に入ってからは, 自力での経口摂取, 簡単な発語や指示動作が可能となった. ADL向上目的で平成10年5月6日当院入院となる. 「方法」入院後約4ヵ月の間に計約20回, 1回につき四肢の運動野に計20...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 36; no. 11; pp. 739 - 740
Main Authors 田中達也, 紫藤泰二, 松元秀次, 上下智之, 内田潤郎, 紫垣光久, 赤城哲哉, 木原薫, 浅山滉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.11.1999
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Summary:瀰漫性軸索損傷は, 有効な治療法がなく自然回復を期待するしかなかった疾患である. 今回我々は, 同疾患の患者に経頭蓋磁気刺激を試み, 有効な結果を得たので報告する. 「症例」19歳男性. 平成8年10月7日, バイク事故にて頭部を打撲. 画像診断にて頭部に異常なく, 瀰漫性軸索損傷と診断される. 受傷後, 遷延性意識障害が続いたが, 平成9年中頃より開眼, 発声, 四肢の動きが見られ, 平成10年に入ってからは, 自力での経口摂取, 簡単な発語や指示動作が可能となった. ADL向上目的で平成10年5月6日当院入院となる. 「方法」入院後約4ヵ月の間に計約20回, 1回につき四肢の運動野に計20回, MAGSTIM200の最大出力の80%で経頭蓋磁気刺激を行った. 効果は臨床症状と電気生理学検査により評価した. 「結果」磁気刺激直後より意識が清明化し, 表情が豊かとなり, 夜間の不穏が軽減した. またその後1カ月の間に, 両側の寝返り, テレビの自力操作, 雑誌のぺージめくりも可能となった. 足部変形のため歩行訓練は行わなかったが, 車椅子がわずかに操作できるようになった. 電気生理学的には特徴的な変化は見られなかった. 副作用はなかった. 「まとめ」経頭蓋磁気刺激が有効であった瀰漫性軸索損傷の1例を経験した. 近年, 各種疾患に対する磁気刺激の有効性が報告されているが, その作用機序は不明である. 今後さらに症例を蓄積し, 検討を重ねていきたい.
ISSN:0034-351X