再開心術における同種血輸血回避症例の検討

【目的】近年, 開心術に際しては輸血感染症やGVHDなどの輸血合併症を避けるため自己血輸血が普及しているが, 再開心術は高度の癒着剥離に際して出血が大量であり, 自己血輸血のみの手術達成は困難であった. しかし, 再開心術症例は前回手術時に輸血を受け様々な合併症を受け易い状況にあり, 更なる同種血輸血を回避することが望ましいことよりretospectiveにその条件を検討した. 【対象と方法】対象は過去5年間の術前自己血を貯血した再開心術症例10例(弁膜疾患9例, 虚血性心疾患1例)とした. A群(同種血輸血回避不能例6例), B群(可能例4例)の2群により術前因子, 手術因子, 出血量, 輸...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 40; no. 2; p. 368
Main Authors 飯島啓太郎, 阿部忠昭, 関谷智理, 佐藤賢行
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.05.1994
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Summary:【目的】近年, 開心術に際しては輸血感染症やGVHDなどの輸血合併症を避けるため自己血輸血が普及しているが, 再開心術は高度の癒着剥離に際して出血が大量であり, 自己血輸血のみの手術達成は困難であった. しかし, 再開心術症例は前回手術時に輸血を受け様々な合併症を受け易い状況にあり, 更なる同種血輸血を回避することが望ましいことよりretospectiveにその条件を検討した. 【対象と方法】対象は過去5年間の術前自己血を貯血した再開心術症例10例(弁膜疾患9例, 虚血性心疾患1例)とした. A群(同種血輸血回避不能例6例), B群(可能例4例)の2群により術前因子, 手術因子, 出血量, 輸血量, 血液バランスを検討した. 手術に際しては術中回収法, 無血充填人工心肺, 人工心肺残留血再利用法を併用した. 【結果】術前因子では年齢がA群がB群より若年にある傾向を認めたが, 自己血貯血量はA群1312ml, B群1337mlで有意差なく, また両群とも出血凝固検査は正常範囲内であり貧血傾向にも有意差を認めなかった. 手術因子は手術時間等に有意差を認めなかった. 術野外への術中失血量と回収血作製のための吸引血量は共にA群に多い傾向を認め, この両者を和した術中総出血量はA群2365ml, B群1432mlであり, 術中自己血バランス(術前貯血量-術中総出血量)はA群-956ml, B群-95mlであった. 術後失血量はA群1417ml, B群752mlであり, 術中同種血輸血を回避した例は7例存在したが, うち3例は術後同種血輸血を受けた. 術中術後の失血量を和した総失血量はA群2597ml, B群1512mlでA群が有意に多く, 総自己血バランス(自己血貯血量+回収血-総失血量)はA群-889ml, B群+42m1で, B群は+であった. 【結論】1)再開心術における同種血輸血回避には総自己血バランスが+であることが必要条件と考えられた. 2)総失血が多い(約2600ml)と予想される例に対しては術前貯血量は1300mlの他に更に900ml以上あることが望ましいと考えられた.
ISSN:0546-1448