ダントロレン投与による重症破傷風症例の管理
近年の破傷風に対する処置の進歩は救命率を増加させたが, 痙攣の抑制が不十分であると筋組織破壊のためリハビリの期間が長くなる. 痙攣阻止には神経筋遮断薬の大量投与が余儀無くされる. このため人工呼吸管理が必要となり肺合併症の危険が大となり時に致命的となる. われわれはこの点を解消するためダントロレンを用い自発呼吸管理を行い良好な経過をえたので報告する. <症例>患者は42歳, 男性. 平成4年5月2日に農作業中右足第一趾受傷し近医にて治療. 受傷7日後, 開口障害, 頸部筋緊張が出現したため, 破傷風を疑い当院紹介となる. 気道閉塞防止のため意識下に経鼻挿管を行い気道を確保した. 開...
Saved in:
Published in | 蘇生 Vol. 11; p. 124 |
---|---|
Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本蘇生学会
01.04.1993
|
Online Access | Get full text |
Cover
Loading…
Summary: | 近年の破傷風に対する処置の進歩は救命率を増加させたが, 痙攣の抑制が不十分であると筋組織破壊のためリハビリの期間が長くなる. 痙攣阻止には神経筋遮断薬の大量投与が余儀無くされる. このため人工呼吸管理が必要となり肺合併症の危険が大となり時に致命的となる. われわれはこの点を解消するためダントロレンを用い自発呼吸管理を行い良好な経過をえたので報告する. <症例>患者は42歳, 男性. 平成4年5月2日に農作業中右足第一趾受傷し近医にて治療. 受傷7日後, 開口障害, 頸部筋緊張が出現したため, 破傷風を疑い当院紹介となる. 気道閉塞防止のため意識下に経鼻挿管を行い気道を確保した. 開口障害出現より24時間後に強直性痙攣が頻回出現するようになったため, サイアミラール持続注入, ベクロニウムの投与を行い人工呼吸管理を開始した. しかしサイアミラール化2.5g/日, べクロニウム64mg/日の大量投与にもかかわらず痙攣を十分抑制しえなかった. このため更に大量の筋弛緩薬, 長時間の人工呼吸が予想されるため, 肺合併症防止と筋破壊阻止のため神経筋遮断薬の投与を削限しダントロレンの持続投与を開始し, 呼吸はSIMVモードとした. 筋破壊の指標である血清CPK, ミオグロビンはダントロレン投与前の第1病日それぞれ1,483u/リットル, 671ng/mlと高値であったが以後急激に減少した. 第5病日より交換神経の過緊張によると思われる血圧上昇を観察したが, ニフェジピン, クロルプロマジン等の投与にて, 対応した. <考案>ダントロレン投与により筋破壊抑制, 自発呼吸の温存により咳嗽反射を保持でき肺合併症防止などの作用が期待できる. 患者は11日間で人工呼吸から離脱し, 18日間でICUを退室後リハビリを開始し, 良好な経過をたどった. |
---|---|
ISSN: | 0288-4348 |