スナネズミ海馬錐体細胞における虚血性神経細胞死のリソソームプロテアーゼによる誘導

一過性脳虚血後に認められる海馬錐体細胞の遅発性神経細胞死はアポトーシス性細胞死が主体であり, bcl-2の減少とカスパーゼの発現が決定的役割を果たすことを報告した. 近年, プロテアーゼによる蛋白質の限定分解の研究が進むにつれ, 蛋白質の制御因子としてのプロテアーゼの機能が重要視され, リソソームブロテアーゼがネクローシスばかりではなくアポトーシスにも関与する可能性が指摘されるようになった. 今回, 遅発性神経細胞死の分子機構を, 神経細胞のリソソームに存在するシステインプロテアーゼであるカテプシンBとアスパラギン酸プロテアーゼであるカテプシンDに注目し解析した. 〔対象と方法〕 60~70g...

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Published in蘇生 Vol. 18; no. 3; p. 213
Main Authors 阿部浩, 白塚秀之, 上田善道, 土田英昭
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.09.1999
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ISSN0288-4348

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Summary:一過性脳虚血後に認められる海馬錐体細胞の遅発性神経細胞死はアポトーシス性細胞死が主体であり, bcl-2の減少とカスパーゼの発現が決定的役割を果たすことを報告した. 近年, プロテアーゼによる蛋白質の限定分解の研究が進むにつれ, 蛋白質の制御因子としてのプロテアーゼの機能が重要視され, リソソームブロテアーゼがネクローシスばかりではなくアポトーシスにも関与する可能性が指摘されるようになった. 今回, 遅発性神経細胞死の分子機構を, 神経細胞のリソソームに存在するシステインプロテアーゼであるカテプシンBとアスパラギン酸プロテアーゼであるカテプシンDに注目し解析した. 〔対象と方法〕 60~70gの雄性スナネズミ30匹を対象とした. イソフルラン麻酔下に総頸動脈露出後, 麻酔を中止, 両側総頸動脈を遮断し, 5分後に解除・覚醒させた. また, 麻酔・手術操作のみで虚血操作を行なわない偽手術群を設けた. 実験中は, 鼓膜温と直腸温を37.0±0.2℃に維持した. 虚血再灌流6,12,24,48,72,96,120時間後(各3匹), 偽手術群(3匹)と共に海馬を通る前額断切片を作製し, HE染色を行なった. また, カテプシンB, カテプシンD, ならびにプロテアーゼの基質としてmicrotubule-associated protein 2(MAP2)の発現を免疫組織学的手法を用い光学顕微鏡的に検討した. さらに, 虚血再灌流24,96時間後(各3匹), 電子顕微鏡的に観察した. 〔結果〕 虚血再灌流24,48時間後, 海馬CA1内側部の錐体細胞に限局した細胞質の腫大と塩基性の消失, 核の崩壊と消失がHE染色で観察され, 同部位にカテプシンBとカテプシンDの発現ならびにMAP2の減少を認めた. 電子顕微鏡的にも, 同部位に細胞内小器官の減少と細胞質内に高電子密度の沈着物質を認めた. 虚血再灌流72,96時間後には, アポトーシスを示唆する所見が従来通り認められた. 〔結論〕 スナネズミ海馬CA1内側部の錐体細胞において, 虚血再灌流24時間後に, アポトーシス性神経細胞死とは異なる機構が存在し, 主にリソソームプロテアーゼが関与することが推測された.
ISSN:0288-4348