大腸癌術後に合併した非定型輸血後GVHDの1例

症例は71歳の女性. 平成7年10月18日某病院にてS状結腸癌摘出術が施行され, その際2人の非血縁者ドナー由来, 採血後4日目の非照射血MAP-RC400mlを輸血された. 輸血後8日目より発熱, 皮疹, 肝障害, 白血球減少が出現し, 当院紹介入院. 理学所見では, 血圧162/88mmHg, 体温37.6度, 脈拍102/min, 意識清明, 心肺は異常認めず. 肝脾は触知せず. 顔面から頸部にかけて斑状紅斑を認めた. 骨髄は著明な低形成で, 91%がリンパ球で占められていた. マイクロサテライトDNA多型分析では, 患者の爪と発症時の血液(平成7年11月16日, 17日, 24日の3回...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 44; no. 5; p. 635
Main Authors 水野聡朗, 森田孝一, 田中泉, 鈴木彦次, 田中公, 永尾暢夫, 柴田弘俊, 今井重美, 多田羅吉晴, 南信行
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.09.1998
Online AccessGet full text
ISSN0546-1448

Cover

More Information
Summary:症例は71歳の女性. 平成7年10月18日某病院にてS状結腸癌摘出術が施行され, その際2人の非血縁者ドナー由来, 採血後4日目の非照射血MAP-RC400mlを輸血された. 輸血後8日目より発熱, 皮疹, 肝障害, 白血球減少が出現し, 当院紹介入院. 理学所見では, 血圧162/88mmHg, 体温37.6度, 脈拍102/min, 意識清明, 心肺は異常認めず. 肝脾は触知せず. 顔面から頸部にかけて斑状紅斑を認めた. 骨髄は著明な低形成で, 91%がリンパ球で占められていた. マイクロサテライトDNA多型分析では, 患者の爪と発症時の血液(平成7年11月16日, 17日, 24日の3回採血)中のCD8陽性細胞から抽出したDNAを, PCR法を用い4種類のプライマー(ACTBP2, INT2, TCF2D, HGH)により増幅させたところ, いずれのプライマーにおいても電気泳動パターンに差異を認めた. また患者, ドナーのHLAタイピングでは, ドナーの一人は患者のハプロタイプのホモ接合体であることがわかった. 以上の結果より輸血後GVHDの確診が得られた. 治療として, サイクロスポリンA, G-CSF, ステロイド及び抗生剤, 抗真菌剤を投与した. 輸血後34日目には下熱傾向, 肝障害の改善認めたが, 輸血後52日目に敗血症来たし死亡された. 輸血後GVHD発症の危険因子には, 高齢, 外科手術, HLAの相同性が高い, 新鮮血の使用などが挙げられ, 本症例もまさにそれを満たすものである. しかし, 本症例においては, 下痢症状を欠き, 肝障害は軽度で, 紅斑も頭頸部に局在するなどの非定型側面があり, 入院当初は薬剤性再生不良性貧血との鑑別が困難であったが, マイクロサテライトDNA解析及びHLAタイピングにより輸血後GVHDの確診が得られた.
ISSN:0546-1448