非溶血性輸血副作用を認めた再生不良性貧血患者血清中に検出された抗IgA, 抗C9抗体の1症例

今回, 血小板製剤輸血時に, 非溶血性の輸血副作用を認めた患者血清中に, 抗IgA抗体と抗C9抗体が認められた. そこで, 洗滌血小板製剤を輸血したが, 頻回輸血を繰り返す中で, 2回, 同様の輸血副作用を認めた症例を経験した. 症例:患者は27歳, 男性. 18歳時に再生不良性貧血の診断を受け, 平成6年, 当院初診以来, 赤血球製剤と血小板製剤を外来にて, 頻回輸血していた. 平成11年3月3日の血小板製剤輸血で, 掻痒感, 皮疹, 息苦しさ, 吐き気を伴う輸血副作用を認めた. 輸血副作用の精査を福岡赤十字血液センターと中央赤十字血液センターへ依頼した. その後の輸血はデカドロン2mgを投...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 47; no. 1; p. 45
Main Authors 東谷孝徳, 川野洋之, 小川美津子, 相浦佳代子, 江頭弘一, 佐川公矯
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.02.2001
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ISSN0546-1448

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Summary:今回, 血小板製剤輸血時に, 非溶血性の輸血副作用を認めた患者血清中に, 抗IgA抗体と抗C9抗体が認められた. そこで, 洗滌血小板製剤を輸血したが, 頻回輸血を繰り返す中で, 2回, 同様の輸血副作用を認めた症例を経験した. 症例:患者は27歳, 男性. 18歳時に再生不良性貧血の診断を受け, 平成6年, 当院初診以来, 赤血球製剤と血小板製剤を外来にて, 頻回輸血していた. 平成11年3月3日の血小板製剤輸血で, 掻痒感, 皮疹, 息苦しさ, 吐き気を伴う輸血副作用を認めた. 輸血副作用の精査を福岡赤十字血液センターと中央赤十字血液センターへ依頼した. その後の輸血はデカドロン2mgを投与しながらの輸血であったが, 長期のステロイド剤の投与を避けるため5月7日で打ち切った. しばらくは, 副作用を認めることなく経過していたが5月28日の輸血時に再び同様の副作用が発生した. そこで, 福岡県赤十字血液センターの技術協力を得て, 洗滌血小板製剤の輸血に切り替えた. ところが, 洗滌血小板製剤の輸血にも関わらず6月7日の輸血と, さらに10月8日の輸血において同様の副作用が認められた. 結果:血液型はA型・Rh陽性. 不規則抗体なし. 抗HLA抗体, 抗血小板抗体, 抗顆粒球抗体および抗Gm抗体等は認められず, 抗IgA抗体および抗C9抗体が抗血漿タンパク質抗体スクリーニング用ELISAおよびウエスタンブロット法で検出された. 血清タンパク質含有量はIgA;491mg/dl,C9;6.6mg/dlと正常範囲であった. 副作用が観察された洗滌血小板製剤のうち10月8日に輸血された製剤は, 総タンパク;2.4g/dl, アルブミン;1.3g/dl,IgG;302mg/dl,IgA;89.5mg/dl,IgM;102mg/dlであった. 結語:今回の輸血副作用の原因の一つに, 抗IgA抗体や抗C9抗体を十分考慮すべきであると思われた.
ISSN:0546-1448