生後2ヵ月の硬膜下血腫症例におけるCCIの経時的変化

Cerebral circulatory index(CCI)は, 脳循環代謝の指標として脳死や頭蓋内病変の病態把握に臨床応用されている. 今回, われわれは, 生後2ヵ月の硬膜下血腫症例において内頸静脈上球部にカテーテルを留置し, 経時的に算出したCCIの変化を臨床症状, CT所見および脳波変化と対比して検討した. さらに, 1歳の溺水後昏睡例についてもまったく同様の検索を行ったので併せて報告する. <症例1>生後38日の男児, 体重4kg. 本年3月7日, 意識障害と右上肢痙攣を主訴に当院ICUへ緊急入室となる. 入室時, 意識はIII-100, 頻回の無呼吸発作が認められ,...

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Published in蘇生 Vol. 4; pp. 64 - 65
Main Authors 清水裕幸, 多賀紀一郎, 水口雅, 田中秀樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.03.1986
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ISSN0288-4348

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Summary:Cerebral circulatory index(CCI)は, 脳循環代謝の指標として脳死や頭蓋内病変の病態把握に臨床応用されている. 今回, われわれは, 生後2ヵ月の硬膜下血腫症例において内頸静脈上球部にカテーテルを留置し, 経時的に算出したCCIの変化を臨床症状, CT所見および脳波変化と対比して検討した. さらに, 1歳の溺水後昏睡例についてもまったく同様の検索を行ったので併せて報告する. <症例1>生後38日の男児, 体重4kg. 本年3月7日, 意識障害と右上肢痙攣を主訴に当院ICUへ緊急入室となる. 入室時, 意識はIII-100, 頻回の無呼吸発作が認められ, CT上左前・側頭部の硬膜下血腫と左大脳半球の広汎な低吸収域および著明なmidline shiftが生じていた. 著しい貧血と凝固能低下が認められたため, Vit.K欠乏による頭蓋内出血と診断しVit.K静注と輸血を行うとともに, 人工呼吸下にバルビチュレート療法を開始. 翌8日, 減圧開頭と血腫除去術施行後, 逆行性内頸静脈穿刺により上球部にIVH用カテーテルを留置. 以後6日間, 1日3回の採血によりCCIを算出した. 術後2日目までは脳波上高振幅棘波が頻発する無呼吸発作が頻回に出現しCCIは52.4まで上昇したが, 無呼吸発作はしだいに減少し, CCIが20台まで回復した4日目には無呼吸発作は完全に消失した. 術後6日目に一般病棟へ帰室した. <症例2>1歳男児, 本年6月25日溺水状態で発見され, 約1時間後に心蘇生に成功. 翌日, 当院へ入院した症例である. ICU入室時, 意識レベルは300, 脳波は当初徐波が認められるも痙攣発作後平担化し, CT上広汎な脳浮腫が認められた. 入室当初のCCIは92.6, バルビチュレート投与によりわずかに減少したが溺水後6日目より急激に上昇し最大151を示した. 本例は臨床症状がまったく改善せず, 広汎な脳の器質的障害が生じたものと推察された. 以上の結果より, CCIは脳循環代謝の臨床指標として有用だと考える.
ISSN:0288-4348