硬膜外併用全身麻酔中, 冠動脈スパスムにより心停止をきたした1例
(症例) 62歳男性. 膵腫瘍に対し膵頭十二指腸切除術が予定された. 既往歴として3年前より糖尿病を指摘, その他特記すべきものは無かった. また冠動脈疾患のリスクファクターとして40年間の喫煙歴があった. 手術室入室後, T9/10より硬膜外麻酔を施行, プロポフォール, サクシニルコリンで全身麻酔導入, GOIで維持した. 血圧低下が見られたため, エフェドリン投与やドパミン持続投与にて血圧を維持した. 導入後80分頃より, モニター心電図上ST上昇が見られた. 冠動脈スパスムを疑い, 換気回数減少, ニトログリセリン持続投与, 血圧低下に対しネオシネジン投与, ジルチアゼム単回投与をする...
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Published in | 蘇生 Vol. 22; no. 3; p. 199 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本蘇生学会
10.10.2003
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ISSN | 0288-4348 |
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Summary: | (症例) 62歳男性. 膵腫瘍に対し膵頭十二指腸切除術が予定された. 既往歴として3年前より糖尿病を指摘, その他特記すべきものは無かった. また冠動脈疾患のリスクファクターとして40年間の喫煙歴があった. 手術室入室後, T9/10より硬膜外麻酔を施行, プロポフォール, サクシニルコリンで全身麻酔導入, GOIで維持した. 血圧低下が見られたため, エフェドリン投与やドパミン持続投与にて血圧を維持した. 導入後80分頃より, モニター心電図上ST上昇が見られた. 冠動脈スパスムを疑い, 換気回数減少, ニトログリセリン持続投与, 血圧低下に対しネオシネジン投与, ジルチアゼム単回投与をするも, 導入後100分に心室細動となった. DC施行により洞調律に戻ったところで経食道心エコーを施行したが, 壁運動は良好であった. DC施行30分後にはST変化も消失した. 手術は中止とし, 挿管のままICU入室となった. 麻酔からの覚醒は良好で, 術中の記憶も無かった. 後日, 再手術の術前検査として, 心臓カテーテル検査を行ったところ, #6, #9, #1にそれぞれ50%の狭窄を認めた. またRCA造影中にスパスムによるものと考えられるST上昇が再び出現した. これより, ジルチアゼムとニコランジルの内服を開始, 初回手術より23日後に再手術が行われた. 麻酔法は全身麻酔のみでGOS+フェンタニル, 術中ニコランジルの持続投与とし, 特に問題なく終了した. (結語) 既往歴や一般の術前検査では心疾患を見落としている可能性がある. 既往の無い患者でも緊急時にすぐに対処できる準備が必要である. |
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ISSN: | 0288-4348 |