未破裂で発見されたバルサルバ洞動脈瘤の1手術例

症例は66歳の男性. 白内障術前心電図検査でI度房室ブロックがみられ心臓超音波検査を施行したところ, バルサルバ洞無冠洞より右房内に突出する直径21mmの未破裂動脈瘤が認められた. バルサルバ洞動脈瘤は右房, 右室内への破裂による心不全, 心外への破裂, 冠動脈圧迫による狭心症などの危険性がある. 一方, 手術成績は良好であることから, 動脈瘤切除およびパッチ閉鎖術を施行した. 動脈瘤の中膜弾性組織は薄い層状弾性線維がみられるのみで一部完全欠損している部分もあり, 先天性部分的中膜形成不全が原因と思われた. 瘤の内膜面は断裂し中膜内には著明なヘモジデリン沈着と非特異的リンパ球浸潤がみられ解離性...

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Published in心臓 Vol. 32; no. 11; pp. 902 - 906
Main Authors 小井手裕一, 川口竹男, 福井和樹, 吉田徹, 大野安実, 田中英穂, 安野憲一, 長谷川章雄, 梅村敏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 丸善 15.11.2000
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ISSN0586-4488

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Summary:症例は66歳の男性. 白内障術前心電図検査でI度房室ブロックがみられ心臓超音波検査を施行したところ, バルサルバ洞無冠洞より右房内に突出する直径21mmの未破裂動脈瘤が認められた. バルサルバ洞動脈瘤は右房, 右室内への破裂による心不全, 心外への破裂, 冠動脈圧迫による狭心症などの危険性がある. 一方, 手術成績は良好であることから, 動脈瘤切除およびパッチ閉鎖術を施行した. 動脈瘤の中膜弾性組織は薄い層状弾性線維がみられるのみで一部完全欠損している部分もあり, 先天性部分的中膜形成不全が原因と思われた. 瘤の内膜面は断裂し中膜内には著明なヘモジデリン沈着と非特異的リンパ球浸潤がみられ解離性変化が認められた. 本例は破裂には至らなかったものの動脈解離をきたしており, バルサルバ洞動脈瘤は無症状かつ未破裂でも破裂の危険性があり, 積極的手術治療が必要と思われた.
ISSN:0586-4488