腎透析患者におけるウイルス感染症
はじめに:透析患者において, 感染症は予後を左右する主な原因のひとつである. 今回, 我々は熊本県下の透析患者について, B型肝炎ウイルス(HBV), C型肝炎ウイルス(HCV)及び成人T細胞白血病(ATL)ウイルス(HTLV-I)の感染と透析期間, 輸血歴, 疾患名, 血清トランスアミナーゼ上昇歴等との関係について検討したので報告する. 対象と方法:熊本県全域にわたる18の透析病院から, 1,435例〔男性853例(平均年齢54.3), 女性582例(55.4)〕の血清が集められ, HBs抗原(RPHA法, フジレビオ):HCV抗体(EIA法, オーソ):HTLV-I抗体(PA法, フジレビ...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 37; no. 3; pp. 453 - 454 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.06.1991
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ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | はじめに:透析患者において, 感染症は予後を左右する主な原因のひとつである. 今回, 我々は熊本県下の透析患者について, B型肝炎ウイルス(HBV), C型肝炎ウイルス(HCV)及び成人T細胞白血病(ATL)ウイルス(HTLV-I)の感染と透析期間, 輸血歴, 疾患名, 血清トランスアミナーゼ上昇歴等との関係について検討したので報告する. 対象と方法:熊本県全域にわたる18の透析病院から, 1,435例〔男性853例(平均年齢54.3), 女性582例(55.4)〕の血清が集められ, HBs抗原(RPHA法, フジレビオ):HCV抗体(EIA法, オーソ):HTLV-I抗体(PA法, フジレビオ)(EIA法, 工ーザイ)の測定を行った. 結果:(1)HBs抗原;陽性率2.5%(34/1,386). 男性2.2%, 女性2.9%と女性が高く, 透析期間との関係は, はっきりとした増加は示さなかった. 輸血の有無とは, 無関係であった. (2)HCV抗体;陽性率22.2%(304/1,367). 男性25.1%, 女性18.8%と男性が高く, 透析期間に比例して陽性率は増加した(p<0.001). 又, 輸血歴なしでも高い陽性率(18.8%)を示した. (3)HTLV-I抗体;陽性率13.2%(173/1,306). 男性12.3%, 女性14.7%と女性が高く, 透析期間が長い程高かった(p<0.002). 輸血量に伴い陽性率が増加するが, 統計学的には有意差はなかった. 又, 疾患別では全て, 慢性糸球体腎炎が最も高い陽性率を, そして血清トランスアミナーゼ上昇歴が無いものより有るものの方が高い陽性率を示した. 考察:透析患者のウイルス感染症陽性率は, 一般献血者のそれに比べ輸血の有無にかかわらずかなり高値を示したことから, 輸血以外にも透析に伴う操作・方法に起因する感染の機会が考えられる. 更に, これらのウイルスによる慢性腎不全への直接的・病因論的関与が考えられる. |
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ISSN: | 0546-1448 |