左肺底動脈閉鎖症の一治験例

症例は48才, 女性. 平成3年4月, 検診胸部単純写真異常で当科初診. 血管異常を疑い, 肺動脈造影施行. 左肺底動脈の欠損を認めた. 大動脈造影では, 太い気管支動脈を認めず. 腹腔動脈造影で脾動脈から分岐する太い左下横隔膜動脈を認め, 横隔膜に分布した後, 左肺下葉に分布, 異常肺動脈と交通していた. 静脈相では, 左肺門部に存在する肺静脈瘤から上肺静脈に灌流していた. 気管支鏡で観察すると, 左主気管支末端縦隔側に小隆起性病変が存在. これを生検した所, 血管性に大出血. 気管支鏡で吸引し, 一時止血, 緊急入院となった. ユニペントチューブを気管内挿管し, 左主気管支をプロッカーで閉...

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Published in気管支学 Vol. 16; no. 3; p. 271
Main Authors 松本修一, 谷川吉政, 高橋清一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本気管支学会 01.05.1994
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ISSN0287-2137

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Summary:症例は48才, 女性. 平成3年4月, 検診胸部単純写真異常で当科初診. 血管異常を疑い, 肺動脈造影施行. 左肺底動脈の欠損を認めた. 大動脈造影では, 太い気管支動脈を認めず. 腹腔動脈造影で脾動脈から分岐する太い左下横隔膜動脈を認め, 横隔膜に分布した後, 左肺下葉に分布, 異常肺動脈と交通していた. 静脈相では, 左肺門部に存在する肺静脈瘤から上肺静脈に灌流していた. 気管支鏡で観察すると, 左主気管支末端縦隔側に小隆起性病変が存在. これを生検した所, 血管性に大出血. 気管支鏡で吸引し, 一時止血, 緊急入院となった. ユニペントチューブを気管内挿管し, 左主気管支をプロッカーで閉塞して止血した. 左下葉は換気機能に関与せず, 再出血の可能性大である為, 左下葉切除を施行した. まず, 術中気管支内出血を防止する為, 左気管支動脈を結紮切断した. 左下葉は体動脈を多数含んだ線維状癒着により後胸壁, 横隔膜と癒着. 左肺底動脈は存在していたが, 通常の肺動脈に比較し, 径8mmと細く, 血流はなかった. 下肺静脈も存在していたが, 左肺門部で静脈瘤を形成し, 上肺静脈に灌流していた. 左下葉切除の後, 術中気管支鏡を施行し, 左主気管支末端の隆起性病変を確認し, これに繋がる気管支動脈を2本結紮した. 術後の病理学的検索では, 左下葉は正常であり, Pryceの分類に従えば, I型に分類されるが, 本病変が先天的であるかどうかを含めて, 分類に苦慮する症例であった. 本症例を手術・内視鏡所見を含めてビデオ供覧する.
ISSN:0287-2137