写字に障害を認めた2症例の検討

失語症に伴う書字障害や純粋失書, 失読失書では, 通常, 写字には障害はないといわれている. 今回, 写字に重度の障害を示した2症例を経験したので, その要因について検討した. 【症例1】45歳, 右手利き, 男性. 2001年5月受傷. 頭部CTにて硬膜外血腫を認め, 緊急手術施行. 1ヵ月後当院に転院. 神経学的には, 右不全片麻痺, 神経心理学的には, 失語症(ウェルニッケタイプ), 失書, 観念失行, 観念運動失行を認めた. 頭部CTで左上頭頂小葉を含む頭頂葉後方から後頭葉にかけて出血を伴う脳挫傷を認めた. 写字については, 運筆がぎこちなく努力を要する, 書き順や筆の運びの方向が通常...

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Published inコミュニケーション障害学 Vol. 20; no. 3; p. 170
Main Authors 永友真紀, 三浦真弓, 井上理恵子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本コミュニケーション障害学会 30.12.2003
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ISSN1347-8451

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Summary:失語症に伴う書字障害や純粋失書, 失読失書では, 通常, 写字には障害はないといわれている. 今回, 写字に重度の障害を示した2症例を経験したので, その要因について検討した. 【症例1】45歳, 右手利き, 男性. 2001年5月受傷. 頭部CTにて硬膜外血腫を認め, 緊急手術施行. 1ヵ月後当院に転院. 神経学的には, 右不全片麻痺, 神経心理学的には, 失語症(ウェルニッケタイプ), 失書, 観念失行, 観念運動失行を認めた. 頭部CTで左上頭頂小葉を含む頭頂葉後方から後頭葉にかけて出血を伴う脳挫傷を認めた. 写字については, 運筆がぎこちなく努力を要する, 書き順や筆の運びの方向が通常とは異なる, などが観察された. 本人は「順番が違う」「書きにくい」と内省した. 【症例2】60歳, 右手利き, 男性. 2001年12月発症. 頭部CTにて左頭頂後頭葉皮質下出血を認め, 翌日開頭血腫除去術施行. 1ヵ月後当院に転院. 既往歴として, 糖尿病, 糖尿病性網膜症あり. 神経学的には失語症(流暢タイプ), 失読失書, 失計算, 構成障害, 右側の無視傾向を認めた. 頭部MRIT2強調画像で左頭頂葉後方から後頭葉にかけて高信号域を認めた. 写字については, 漢字は空間的配置の障害が顕著. 仮名は運筆がぎこちない, 丸めではないところを丸める, 丸めの形が不自然といった特徴がみられた.
ISSN:1347-8451