滝沢論文に対するEditorial Comment

悪性腫瘍治療の原則は早期発見による外科的切除である. 心臓原発性悪性腫瘍は病理解剖による発生頻度が0.1%以下と稀な疾患であり, 特異的な自覚症状や検査所見に乏しいことから, 早期発見が困難な疾患の一つである. 滝沢論文は心臓腫瘍の早期発見に関して示唆に富むものである. 心嚢水貯留は心臓悪性腫瘍の初発症状としてよく認められる. 心エコー法の普及に伴い, 無症候性心嚢水が増加しているが, 必ずしも心臓腫瘍の早期発見につながっているとはいえない. 滝沢論文でも初回入院時に心エコーが行われているが, 心臓腫瘍は指摘されていない. むしろ, 初診時心タンポナーデの所見なく, 全周性に10mmの心嚢水貯...

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Published in心臓 Vol. 39; no. 11; p. 1014
Main Author 七里守
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本心臓財団 15.11.2007
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ISSN0586-4488

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Summary:悪性腫瘍治療の原則は早期発見による外科的切除である. 心臓原発性悪性腫瘍は病理解剖による発生頻度が0.1%以下と稀な疾患であり, 特異的な自覚症状や検査所見に乏しいことから, 早期発見が困難な疾患の一つである. 滝沢論文は心臓腫瘍の早期発見に関して示唆に富むものである. 心嚢水貯留は心臓悪性腫瘍の初発症状としてよく認められる. 心エコー法の普及に伴い, 無症候性心嚢水が増加しているが, 必ずしも心臓腫瘍の早期発見につながっているとはいえない. 滝沢論文でも初回入院時に心エコーが行われているが, 心臓腫瘍は指摘されていない. むしろ, 初診時心タンポナーデの所見なく, 全周性に10mmの心嚢水貯留を認め, その後経過観察のみで消失したことが興味深い. その臨床経過はあたかもウイルス性心膜炎のようであるが, 先行する感染兆候がないこと, 貯留していた心嚢水が多いこと, 心嚢水消失後も心電図上軽度のST上昇が持続していたことなど, 典型的な臨床経過とはいい難い.
ISSN:0586-4488