習慣性流産患者のリンパ球免疫療法における抗血小板抗体の産生について

[目的] 習慣性流産に対してリンパ球の免疫療法が有効と言われ, 当病院でも平成9年から実施している. これまで妊娠が維持され出産にこぎつけた例もある. 本治療法ではHLA抗体だけでなく, ヒト血小板抗体(HPA抗体)も産生される可能性がある. そこで今回治療後におけるこれら抗体の産生の状況を検討した. [対象と方法] 平成9年-12年11月間にリンパ球免疫療法を行なった患者8例(年齢24-38歳, 治療回数5-10回)のHLA抗体及びHPA抗体の産生について検索した. 輸注リンパ球は一回平均5x10^7 個皮下注とした. HLA抗体はLCT法, フローサイトメトリー法, HPA抗体はMPHA法...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 47; no. 2; p. 203
Main Authors 馬場佳子, 吉田さやか, 青木綾子, 梶原道子, 小松文夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.04.2001
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ISSN0546-1448

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Summary:[目的] 習慣性流産に対してリンパ球の免疫療法が有効と言われ, 当病院でも平成9年から実施している. これまで妊娠が維持され出産にこぎつけた例もある. 本治療法ではHLA抗体だけでなく, ヒト血小板抗体(HPA抗体)も産生される可能性がある. そこで今回治療後におけるこれら抗体の産生の状況を検討した. [対象と方法] 平成9年-12年11月間にリンパ球免疫療法を行なった患者8例(年齢24-38歳, 治療回数5-10回)のHLA抗体及びHPA抗体の産生について検索した. 輸注リンパ球は一回平均5x10^7 個皮下注とした. HLA抗体はLCT法, フローサイトメトリー法, HPA抗体はMPHA法によった. [結果] HLA抗体・HPA抗体ともに陽性化したのは3例, HLA抗体陽性・HPA抗体陰性は3例, HLA抗体・HPA抗体ともに陰性のままが2例であった. HLA抗体陽性となった6例は3-4回のリンパ球接種後から抗体が検出された. HPA抗体陽性化の3例についてanti-HPA・MPHAパネルを用いて特異性を見たところ, HPA-3a(Bak^3 )抗体, HPA-4b(Yuk^a )抗体が各1例同定された. 残りの1例は同定不能であった. これら8例中4例はAIH療法(人工受精)を実施した. 現在3例が出産し, その他は妊娠中及び未妊娠である. なお1例に弱い赤血球抗体の産生を見たがこの例は無事出産した. [考察] リンパ球輸注療法で産生された抗体は遮断抗体として作用し妊娠の維持に有効とされるが, 今回の検索では8例中3例が出産にこぎつけたが, 他の3例にHPA抗体の産生を見, うち2例に新生児血小板減少性紫斑病の原因となるHPA-3a(Bak^a )抗体とHPA-4b(Yuk^a )抗体が検出された. リンパ球の分離の際, 出来るだけ血小板の除去に努めたが, それでもHPA抗体を産生することがあることに注意を要する.
ISSN:0546-1448