DOWN症候群における永久歯先天性欠如歯の放射線学的検討

1959年Down症候群は, 47個の染色体を有することが確認され, その後転座型, モザイク型などについて詳細な報告が行われた. そしてこの様な染色体の変化と関連した全身の病態特徴に関しても現在数多くの研究が試みられている. 更に今日, 染色体の変化が及ぼす口腔内の病態特徴に関しても注目が集まってきている. しかしながら, 歯科放射線学的見地から詳細な調査を行った報告はほとんど認められない. そこで我々は染色体の変化が及ぼす口腔内の病態特徴を明らかにするため, 21番目の染色体が1本過剰な標準型Down症候群(47, XXorXY, 21トリソミー)の永久歯先天性欠如歯の発現状況について放射...

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Published in歯科放射線 Vol. 36; no. 2; pp. 125 - 126
Main Authors 熊坂さつき, 宮城敦, 酒井信明, 鹿島勇
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯科放射線学会 30.06.1996
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ISSN0389-9705

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Summary:1959年Down症候群は, 47個の染色体を有することが確認され, その後転座型, モザイク型などについて詳細な報告が行われた. そしてこの様な染色体の変化と関連した全身の病態特徴に関しても現在数多くの研究が試みられている. 更に今日, 染色体の変化が及ぼす口腔内の病態特徴に関しても注目が集まってきている. しかしながら, 歯科放射線学的見地から詳細な調査を行った報告はほとんど認められない. そこで我々は染色体の変化が及ぼす口腔内の病態特徴を明らかにするため, 21番目の染色体が1本過剰な標準型Down症候群(47, XXorXY, 21トリソミー)の永久歯先天性欠如歯の発現状況について放射線学的な調査を行い, 健常者との比較検討を行った. 永久歯先天性欠如歯の調査は, 断層式パノラマエックス線写真を中心に患者調査録, 歯科診療録を参考資料として使用し以下の結果を得た. 1.欠如歯発現率はDown症候群が健常者に比べ有意に高かった. (p<0.001) 2.Down症候群の欠如歯発現率は女性の方が高い傾向を示したが, 統計学的有意差はみられなかった. 3.一人平均欠如歯数はDown症候群では1.8本, 健常者では0.2本でありDown症候群の平均欠如歯数が有意に高かった. (p<0.001)一方Down症候群における男性の一人平均欠如歯数は1.6本, 女性は2.0本であり女性の方が高い傾向を示したが, 統計学的有意差はみられなかった. 4.欠如歯を有する者の中で, 2本以上の複数欠如歯を持つ者の割合は, Down症候群では84%を占めるのに対し, 健常者では16%だった. 5.欠如部位はDown症候群, 健常者とも退化の法則にあてはまっていた. 6.欠如歯の歯種別発現率はDown症候群, 健常者ともに性差, 左右差を認めなかった. 7.Down症候群において中切歯の欠如は下顎に多く(p<0.025), 第二大臼歯は上顎に多かった(p<0.05). Down症候群や各種系統疾患では, 歯や顔面頭蓋骨に異常をきたす場合がしばしば認められ, エックス線所見が診断の決め手となる場合も少なくない. しかしながらそれら所見が放射線学的に検討された報告は少なかった. 今回の結果から永久歯先天性欠如歯を引き起こす要因の一つに21番目の1本過剰な染色体が関係している可能性を導くことができた. 今後, これらの症候群や疾患の調査に歯科放射線学的立場からも積極的に取り組む必要性があるものと考えられたので報告する.
ISSN:0389-9705