小児血友病患者の口腔管理

血友病患者の治療・管理には, 小児科・内科・整形外科・口腔外科等のチームアプローチが重要である. 当科は奈良県立医科大学附属病院血友病患者診療チームの一員として同患者の口腔治療および口腔管理を多く手がけている. 今回我々は当科開設の昭和56年10月より7年間に当科受診の血友病A・Bおよび類縁疾患のうち患者数の比較的多かったvon Willebrand病患者について特に小児にしぼり歯牙交換期の臨床統計と出血管理を中心に報告する. 7年間に当科を受診した初診時15歳未満の小児患者は, 血友病A31名(severe type 22名, moderate type 5名, mild type 4名)血...

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Published in小児口腔外科 Vol. 1; no. 1; p. 89
Main Authors 竹内尚則, 松塚裕弘, 岡本雅人, 河野孝行, 杉村正仁
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本小児口腔外科学会 01.05.1991
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ISSN0917-5261

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Summary:血友病患者の治療・管理には, 小児科・内科・整形外科・口腔外科等のチームアプローチが重要である. 当科は奈良県立医科大学附属病院血友病患者診療チームの一員として同患者の口腔治療および口腔管理を多く手がけている. 今回我々は当科開設の昭和56年10月より7年間に当科受診の血友病A・Bおよび類縁疾患のうち患者数の比較的多かったvon Willebrand病患者について特に小児にしぼり歯牙交換期の臨床統計と出血管理を中心に報告する. 7年間に当科を受診した初診時15歳未満の小児患者は, 血友病A31名(severe type 22名, moderate type 5名, mild type 4名)血友病B5名(severe type 2名, moderate type 2名, mild type 1名)von Willebrand病4名(Type II A 2名, II B 1名, II C 1名)であった. 女児はvon Willebrand病の1名のみ, インヒビターを認めた症例は血友病A・Bに各1名であった. 当科において抜歯は21人に対し25回, 永久歯5本, 乳歯42本, 過剰歯1本に行なった. 欠乏因子の補充なしに抜歯を行なった8回のうちDDAVPを使用したものが6回, 局所処置のみで止血したものが2回であった. 歯肉出血に対する止血処置は8人9回施され, 圧迫のみで止血した1例を除く8回に補充療法を行なった. 口唇・頬粘膜などの可動軟組織出血に対しては5回すべてに補充療法を行なった. 出血時および観血処置時の止血療法は因子欠乏の程度・インヒビターの有無・局所の状態や処置内容等を考慮したうえで補充療法の有無や欠乏因子活性上昇期待値の程度を歯科口腔外科的な立場にたって選択すべきであると考える. また, 口腔衛生指導・定期検診をはじめとする系統的な口腔管理を行なうことが歯牙交換期の出血や抜歯の必要性の減少にもっとも重要であることは言うまでもないことである.
ISSN:0917-5261