輸血後移植片対宿主病(PT-GVHD)の1症例
輸血後GVHDは重篤な輸血副作用の一つであり死亡率は90%以上と言われている. 今回我々は, 手術時の輸血によってPT-GVHDの発症した患者についてHLAタイピングを実施したので, 経過と合わせて報告する. 患者は33歳の男性, 仕事中に右手1~3指を切断, 接看手術施行時に400ml由来CRC1単位を輸血した. 全身状態良好であったが, 術後13日頃より肝障害と紅斑が現れ骨髄低形成となり下痢, 下血, 発熱が持続, 皮膚生検でGVHDと診断された. 発症7日後に分離したリンパ球は, ドナー由来と考えられるHLAタイプがホモ接合のものが大部分を占めていたが, 20日後ではFAMILY STU...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 38; no. 6; p. 865 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.12.1992
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ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | 輸血後GVHDは重篤な輸血副作用の一つであり死亡率は90%以上と言われている. 今回我々は, 手術時の輸血によってPT-GVHDの発症した患者についてHLAタイピングを実施したので, 経過と合わせて報告する. 患者は33歳の男性, 仕事中に右手1~3指を切断, 接看手術施行時に400ml由来CRC1単位を輸血した. 全身状態良好であったが, 術後13日頃より肝障害と紅斑が現れ骨髄低形成となり下痢, 下血, 発熱が持続, 皮膚生検でGVHDと診断された. 発症7日後に分離したリンパ球は, ドナー由来と考えられるHLAタイプがホモ接合のものが大部分を占めていたが, 20日後ではFAMILY STUDYから推定される, 患者本来のHLAタイプを持つリンパ球が増加していた. 患者は免疫抑制療法などを受けたが, 輸血36日後に死亡した. 今回の症例は免疫能が正常な患者への外科手術の際の輸血が原因であり, PT-GVHDは特殊な症例にのみ発生するものではないことが確認された. 今後より迅速な診断や有効な治療法の確立が望まれるが, 予防として放射線やUV照射による血液製剤中のリンパ球の不活化が必要と思われます. |
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ISSN: | 0546-1448 |