ドクターヘリ受入れと地域の救命救急センター(当院)の救急医療~ドクターヘリ受入開始の成果と現況

<はじめに>当院(安城更生病院)は2002年5月に救命救急センターを開設し, 2004年10月までにドクターヘリによる35例の救急搬送を受け入れた. 今回我々はドクターヘリ搬送による地域救急医療に関して検討した. <目的>当院(西三河地区の救命救急センター)が受け入れたドクターヘリ搬送患者に関して分析することにより, 航空機を用いた救急医療が可能な社会的環境において地域の救命救急センターが果たすべき役割を検討する. <方法>2002年5月から2004年10月に当院が受け入れた, ドクターヘリによる救急搬送症例35例に関して, 回顧的に分析・検討を行なった....

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Published in日本農村医学会雑誌 Vol. 54; no. 3; p. 414
Main Authors 水野光規, 田渕昭彦, 廣瀬有紀, 岡田恵理子, 守屋佳恵, 西川隆太郎, 竹内直子, 加納正也, 鈴木和広, 八田誠
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本農村医学会 01.09.2005
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ISSN0468-2513

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Summary:<はじめに>当院(安城更生病院)は2002年5月に救命救急センターを開設し, 2004年10月までにドクターヘリによる35例の救急搬送を受け入れた. 今回我々はドクターヘリ搬送による地域救急医療に関して検討した. <目的>当院(西三河地区の救命救急センター)が受け入れたドクターヘリ搬送患者に関して分析することにより, 航空機を用いた救急医療が可能な社会的環境において地域の救命救急センターが果たすべき役割を検討する. <方法>2002年5月から2004年10月に当院が受け入れた, ドクターヘリによる救急搬送症例35例に関して, 回顧的に分析・検討を行なった. <結果>出動種類別で分類すると, 救急現場からの搬送が33例(94%), 転院搬送が2例(6%)であり, 救急現場からの搬送が非常に多かった. 疾病分類別では, 内因性疾患が8例(23%), 外因性疾患が27例(77%)であり, 外因性疾患が大半を占めていた. 救急現場からの搬送33例に関して, 外来転帰は入院19例(58%), 死亡9例(27%), 帰宅5例(15%)であった. 救急現場から搬送された外因性疾患27例のうち, 外傷症例(指再接着目的のみにて搬送された症例は除く)は21例であった. 当該21例に関して, 解剖学的重症度としてISS(Injury Severity Score)を算出し, 転帰をGOS(Glasgow Outcome Scale)で評価した. ISS 0~9の症例7例は, 全例GR(Good Recovery)であった. ISS 10~19の症例7例のうち, 6例がGR, 1例がMD(Moderate Disability)であった. ISS 20~29の5症例のうち, 2例がGR, 3例がD(Dead)であった. ISS 30~39の2症例のうち, 1例がVS(Vegetative State), 1例がDであった. また, 来院時における予測生存率としてTRISS(Trauma Injury Severity Score)によりPs(Probability of Survival)を算出し, 転帰をGOSで評価した. 一般にpreventableと考えられているPs>0.5の症例17例では, GR14例, MD1例, VS1例, D1例とおおむね良好な転帰であった. 一方, non-preventableと考えられるPs<0.25の症例4例のうち, 1例はGRであった. 救急現場から搬送された内因性疾患に関しても, 心肺停止により蘇生術を施行されGOSでGRの症例2例等, 良好な成果が挙げられていた. <考察>地域の救命救急センターがドクターヘリによる救急搬送の受入を行なうことにより, 次のような利点があると考えられる. 搬送時間短縮が可能となること, 搬送前に現場で迅速な2次救命処置が可能となること, そして休日等の限られた条件下で最適な搬送先選定が可能となることである. また症例分析より, 地域の救命救急センターへのドクターヘリ搬送の大半を占める外因性疾患に対して, 予後改善や防ぎえた外傷死数の抑制が期待できることが示唆された. <結語>ドクターヘリ制度普及により, 地域の救命救急センターがドクターヘリ搬送患者を受け入れることは, 地域の救急医療の質の向上に有用であることが示唆された. 地域救急医療の質の向上のため, 地域の救命救急センターがドクターヘリ受入体制の整備を積極的に進める必要があると考えられる.
ISSN:0468-2513