顎関節円板側方転位例の臨床症状について

顎関節円板の転位は前方ばかりに生じるわけではなく, 内外側方向へも転位することが良く知られている. しかし, 側方転位の病態が臨床症状から顎関節内障の中でどのように位置づけできるのかについての報告は少ない. そこで, 1993年6月~1996年12月までに顎関節症の疑いでMR画像検査を行った症例のうち, 画像上で側方転位と診断されたものの中で反対側に関節円板前方転位が存在しなかった107関節(外方転位45関節, 内方転位62関節)と復位を伴う円板前方転位554関節とを比較検討した. なお, 復位を伴う例ではその円板の転位程度によって症状の傾向が異なることから, 転位程度を関節円板後方肥厚部の位...

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Published in歯科放射線 Vol. 38; no. 2; p. 131
Main Authors 五十嵐千浪, 小林馨, 湯浅雅夫, 今中正浩, 山本昭
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯科放射線学会 30.06.1998
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ISSN0389-9705

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Summary:顎関節円板の転位は前方ばかりに生じるわけではなく, 内外側方向へも転位することが良く知られている. しかし, 側方転位の病態が臨床症状から顎関節内障の中でどのように位置づけできるのかについての報告は少ない. そこで, 1993年6月~1996年12月までに顎関節症の疑いでMR画像検査を行った症例のうち, 画像上で側方転位と診断されたものの中で反対側に関節円板前方転位が存在しなかった107関節(外方転位45関節, 内方転位62関節)と復位を伴う円板前方転位554関節とを比較検討した. なお, 復位を伴う例ではその円板の転位程度によって症状の傾向が異なることから, 転位程度を関節円板後方肥厚部の位置から軽度, 中等度, 高度の3種に分類した. 臨床症状として顎関節部痛, 最大開口距離40mm以下の開口制限とclick音を取り上げた. 関節痛の発現頻度は, 復位を伴う症例で転位程度が増すほど高くなる傾向がみられ, とくに内方転位との間に5%以下の危険率で統計学的に有意差を認めた. 開口制限は, 軽度の前方転位度を示す復位を伴う症例に高率で認められ, 側方転位例との間に有意差が存在した. click音の発現頻度は, 中等度, 高度の順に転位が増すほど高くなり, 中等度以上の転位を示したものと側方転位との間に差が認められた. 以上のように, 前方転位例に類似した臨床症状を示す側方転位例は, 復位を伴う円板前方転位のうち軽度の転位を示す症例に比べより高頻度に臨床症状が発現していた. このことは側方転位例が, 軽度の円板前方転位例よりは進行した臨床病態を想定して取り扱う必要性があるものと考えられる. また, 内方転位と外方転位とを比較した場合, 外方転位例に臨床症状を生じる頻度が高い傾向が認められた.
ISSN:0389-9705