南天中毒により呼吸抑制を生じた1症例

南天は漢方薬として鎮咳, 消炎, 強壮作用などを有し一般にも市販されているが, その実及び葉は有毒成分を有しており, 大量の服用では中毒症状を呈する. 今回, 南天の葉を大量に服用し, 呼吸抑制から意識消失を来たした非常にまれな症例を経験したので報告する. (症例)79歳男性. 既往歴として約30年前に胃切除術を施行. また前立腺肥大症にて臭化ジスチグミン, アリルエストレノールを内服中である以外特記事項なし. 平成13年5月3日, 17時頃に蕁麻疹が出現したため21時45分頃南天の葉を煎じて服用(約50g). 22時30分頃, 意識消失しているところを家人が発見, 22時40分, 救急車にて...

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Published in蘇生 Vol. 20; no. 3; p. 273
Main Authors 白塚秀之, 唐沢紀幸, 小柳覚, 田辺毅
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 12.09.2001
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ISSN0288-4348

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Summary:南天は漢方薬として鎮咳, 消炎, 強壮作用などを有し一般にも市販されているが, その実及び葉は有毒成分を有しており, 大量の服用では中毒症状を呈する. 今回, 南天の葉を大量に服用し, 呼吸抑制から意識消失を来たした非常にまれな症例を経験したので報告する. (症例)79歳男性. 既往歴として約30年前に胃切除術を施行. また前立腺肥大症にて臭化ジスチグミン, アリルエストレノールを内服中である以外特記事項なし. 平成13年5月3日, 17時頃に蕁麻疹が出現したため21時45分頃南天の葉を煎じて服用(約50g). 22時30分頃, 意識消失しているところを家人が発見, 22時40分, 救急車にて当院救急外来へ搬送された. 来院時, 血圧208/108mmHg, 脈拍85回/分で, 著明な縮瞳を来たし, 下顎呼吸の状態であった為直ちに気管挿管を行った. 頭部CT上特に異常所見は認めなかった. 胸部レントゲン写真上両側肺野にうっ血像を認め, 動脈血ガス分析上, F_IO2 1.0にてPH7.195, Pa_O2 83.6mmHg, Pa_CO2 28.4mmHg, HCO_3 ^- 10.6mmol/リットル, BE-16.4, 乳酸53mg/dlと乳酸アシドーシスの所見を呈し, 全身管理目的にてICU入室となった. 入室後は100%酸素による人工呼吸管理及び下剤の投与, アシドーシスの補正による治療を行ない, 第2病日には血液ガス分析は正常となったが, 胸部レントゲン写真上肺のうっ血像が消失せず, 抜管までに3日間を要した. その他血液検査上特に異常所見は認めなかった. 第4病日には一般病棟に退室, 第14病日, 後遺症もなく無事退院となった. (考察)南天の葉の成分は分解すると青酸を発生し, 青酸中毒を生じるとされている. 鎮咳, 消炎などの目的で南天を煎じて服用する場合もあるが, その用量は5~8g/日とされており, 本症例における約50gの服用は明らかに高用量であった. このことから南天の葉の大量服用により青酸中毒を生じ, 呼吸抑制ならびに肺水腫を来した可能性が示唆される. (結語)南天の葉の大量服用から呼吸抑制および意識消失を来した症例を経験した.
ISSN:0288-4348