右心不全を呈した肺動脈原発肉腫の1手術例
症例は69歳男性, 平成2年から約5年間化学物質による粉塵暴露の既往がある. 平成7年4月より咳嗽と労作時呼吸困難が出現, その後胸膜炎や自然気胸を起こし, 身のまわりの生活でも呼吸困難を訴えるようになり入院してきた. 心エコーや胸部X線CT検査で肺動脈本幹から左右肺動脈にかけ巨大な腫瘤を認め, 本幹狭窄および左肺動脈の完全閉塞, それに著しい右室拡大がみられた. 肺動脈造影でも肺動脈本幹から右肺動脈にかけた腫瘤による狭窄と左肺動脈の完全閉塞が示された. 右室の収縮期圧は96mmHgと高値であった. その後浮腫や尿量減少など右心不全症状が進行したため, 腫瘤摘出術を行った. 迅速病理診断で肺動...
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Published in | 心臓 Vol. 31; no. 4; pp. 248 - 254 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
丸善
15.04.1999
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ISSN | 0586-4488 |
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Summary: | 症例は69歳男性, 平成2年から約5年間化学物質による粉塵暴露の既往がある. 平成7年4月より咳嗽と労作時呼吸困難が出現, その後胸膜炎や自然気胸を起こし, 身のまわりの生活でも呼吸困難を訴えるようになり入院してきた. 心エコーや胸部X線CT検査で肺動脈本幹から左右肺動脈にかけ巨大な腫瘤を認め, 本幹狭窄および左肺動脈の完全閉塞, それに著しい右室拡大がみられた. 肺動脈造影でも肺動脈本幹から右肺動脈にかけた腫瘤による狭窄と左肺動脈の完全閉塞が示された. 右室の収縮期圧は96mmHgと高値であった. その後浮腫や尿量減少など右心不全症状が進行したため, 腫瘤摘出術を行った. 迅速病理診断で肺動脈原発肉腫(primary intimal sarcoma)と診断した. 術後, 右心不全症状は著明に改善し, 右室の収縮期圧も32mmHgに低下した. 文献的には本邦における肺動脈原発肉腫は21例報告されている. その中で, 生前に診断がされ摘出術が行われたのは6例と極めて少なく, かつ自覚症状から診断まで3年以上を有しているのは本例のみである. |
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ISSN: | 0586-4488 |